ハイレベル商法・会社法キーワード

全体像
会社法は、会社という独立した財産の器の中で、誰が決め、誰が監視し、利益と損失を誰へ帰属させるかを定める。この残り範囲は会計・配当、持分会社、少数株主保護、役員責任、手形小切手が中心となる。会社の内部決定が適法か、取引相手との関係で効力があるか、誰に損害回復責任があるかを順番に分ける。手形・小切手では、売買等の原因関係、証券上の責任、流通後の取得者保護という三つを重ねずに読む。

4-1. 商取引・商業帳簿・場屋営業

取引を続ける商人には、取引記録を残し、相手の財産を専門家として扱う責任がある。交互計算は複数取引をまとめて精算する仕組みであり、場屋営業の責任は客が物を預けたか、高価品を明告したかで枝分かれする。営業者という名称だけで一律の責任を導かず、どの危険を引き受けたかをみる。
参照:B-COMMERCE

[CM-029] 商業帳簿の作成保存
商人は適時正確な商業帳簿を作成し、帳簿と営業上の重要資料を原則10年間保存しなければならない。商業帳簿は取引と財産状態を後から検証するための記録である。株式会社の会計帳簿については会社法の別規定が適用される。

[CM-030] 商業帳簿提出命令
裁判所は申立て又は職権により、訴訟当事者に商業帳簿の全部又は一部の提出を命じることができる。当事者の任意開示だけに依存せず取引を検証するための裁判所の権限であり、株主による帳簿閲覧請求とは別制度である。

[CM-042] 交互計算の効力
継続取引から生じる債権債務を一定期間総額で相殺し、残額だけを支払う合意では、各債権は原則独立行使できない。個々の売掛金をその都度決済せず、一定期間の収支を一本の残額債権へまとめる仕組みである。単発の債権を相殺する場合と区別する。

[CM-464] 商人受寄者の善管注意義務
商人が営業範囲内で寄託を受けたときは、無報酬でも善良な管理者の注意をもって寄託物を保管しなければならない。商人は専門性をもって営業するので、無償でも自己の物と同じ注意で足りるとはしない。民法の無償寄託の原則との差が出る。

[CM-465] 寄託品に対する場屋営業者責任
場屋営業者は客から寄託を受けた物品の滅失・損傷につき、不可抗力を証明しなければ責任を免れない。宿泊・飲食等の場屋営業者が物を預かった場合は通常より重い責任を負う。単に『自分には過失がない』だけで常に免責されない。

[CM-466] 非寄託携帯品に対する場屋営業者責任
客が寄託していない携帯品も場屋営業者の注意懈怠で滅失・損傷したときは場屋営業者が賠償責任を負う。預けていない物まで絶対責任を負うわけではない。営業者側の不注意と損害の関係が問題となる。

[CM-467] 責任を負わない旨の告示
場屋営業者は携帯品について責任を負わない旨を告示しただけでは商法596条の責任を免れない。『盗難について責任を負いません』という掲示だけで法律上の責任を一方的に排除できない。免責特約の有効性という別の問題もある。

[CM-468] 高価品の種類・価額明告
貨幣、有価証券その他高価品は客が種類と価額を明告して寄託しなければ場屋営業者は原則責任を負わない。特に高価な物は危険の大きさを営業者へ知らせ、適切な管理を選べるようにする。高価品であることを黙って通常品と同様に預けた場合を区別する。

4-2. 役員の職務と監査

出資者と実際の経営者が異なる会社では、経営者が会社の利益から外れないよう監視が必要となる。取締役同士の監視、内部統制、監査役、会計参与、会計監査人はそれぞれ役割が違う。『監査する人』という同じ言葉にまとめず、書類を作る者、会計を確認する者、業務を監督する者を分ける。
参照:B-COMP

[CM-212] 具体的報酬請求権
株主総会決議等で具体的報酬額が確定すると、原則として会社は取締役の同意なく一方的に減額できない。職務の対価について具体的な契約上の権利が生じた段階だからである。将来の報酬制度を決める会社内部の権限だけで、既発生の請求権を当然に消せるわけではない。

[CM-213] 取締役の監視義務
取締役会構成員は、担当業務の有無を問わず、他の取締役の職務執行を監視する義務を負う。自分が直接行っていない業務でも、疑わしい取引や報告を放置すれば監視義務違反となり得る。結果だけでなく、情報の入手と合理的な対応の有無をみる。

[CM-214] 内部統制体制整備義務
取締役は会社の規模・事業内容・リスクに応じ、損失危険管理や法令遵守等の内部統制体制を整備・運用する義務を負う。会社内で違法行為を発見・報告・是正できる仕組みを作る義務である。どんな不正も絶対に防ぐ結果保証ではなく、規模と予見される危険に見合う体制かが問題となる。

[CM-232] 業務財産検査役
少数株主は、不正行為又は重大な法令定款違反を疑う事由があるとき、裁判所に検査役選任を申し立てられる。少数株主が会社内部の不正を調べるための裁判所による調査である。原則として議決権又は株式の3%以上の保有要件があり、定款でその割合を下げられる。

[CM-242] 会計参与の職務
会計参与は取締役等と共同して計算書類等を作成し、会社とは別の場所にも備え置いて株主等の閲覧に供する。会計参与は計算書類を『共同作成』する専門家である。できた書類を独立して『監査』する会計監査人と役割が異なる。

[CM-243] 会計監査人の職務
会計監査人は計算書類・附属明細書等を監査し、会計監査報告を作成する。会計監査人は公認会計士又は監査法人でなければならない。業務執行全般を監視する監査役の職務と同一ではない。

4-3. 会計・資本金・配当

会計は会社の財産状態を見えるようにし、配当規制は有限責任の下で債権者に残す財産を守る。資本金は現金の残高そのものではなく法的な計数である。利益が出たから自由に全部を配れるのでも、減資したから直ちに会社の現金が流出するのでもない。機関決定、債権者保護、分配可能額、違反責任を順に確認する。
参照:B-COMP

[CM-252] 会計帳簿の作成保存
株式会社は適時正確な会計帳簿を作成し、閉鎖時から10年間保存しなければならない。作成義務と保存義務は別であり、10年の起算点は会計帳簿の閉鎖時である。会社の重要な事業資料も保存対象となる。

[CM-253] 会計帳簿閲覧請求の持株要件
総株主議決権又は発行済株式の3%以上を有する株主は、理由を明らかにして会計帳簿等の閲覧謄写を請求できる。3%は議決権基準と株式数基準のいずれかを満たせばよい。定款で割合を引き下げることができ、公開会社でも6か月の継続保有は要求されない。

[CM-254] 会計帳簿閲覧請求の拒絶事由
会社は、権利行使の調査以外の目的、会社の業務妨害・株主共同利益の加害目的、実質的競業、利益を得て第三者へ情報を通報する目的又は過去2年内のその実績など、会社法433条2項の法定事由がある場合に会計帳簿閲覧を拒める。拒絶は法定事由に限定される。実質的競争関係にある事業を営む・従事すること自体が拒絶事由となり得るため、すべてを『競業へ悪用する意図の立証が必要』と覚えない。

[CM-255] 計算書類等の作成
株式会社は各事業年度の計算書類、事業報告及びそれぞれの附属明細書を作成する。会社法435条4項による10年保存の対象は計算書類及びその附属明細書であり、事業報告等の備置義務とは区別する。貸借対照表・損益計算書等の計算書類は会社の財産と損益を示し、事業報告は事業の状況を説明する。保存対象・期間と、本支店の備置期間を混同しない。

[CM-256] 計算書類等の監査
監査役・会計監査人設置会社の計算書類等は、法定範囲で各監査を受けなければならない。監査役の監査には事業報告も含まれる一方、会計監査人の中心対象は計算書類等の会計情報である。機関設計により監査の主体と範囲が変わる。

[CM-257] 計算書類の承認
取締役会設置会社では取締役会承認を経た計算書類を定時株主総会へ提出し、原則その承認を受ける。会計監査人設置会社で法定の適正意見等の要件を満たす場合、計算書類は総会承認に代えて内容の報告で足りる。事業報告は原則として報告事項である。

[CM-258] 決算公告
株式会社は定時株主総会終結後遅滞なく貸借対照表等を公告しなければならない。小規模な非公開会社だから決算公告義務が当然になくなるわけではない。大会社では損益計算書も公告対象となる。

[CM-259] 決算公告義務の例外
金融商品取引法上の有価証券報告書提出会社は、会社法上の決算公告を要しない。別制度の継続的な情報開示があるための例外である。株式を上場しているかという呼称だけでなく、有価証券報告書提出義務の有無を確認する。

[CM-260] 資本金額
設立又は株式発行に際して払い込まれた財産額は原則資本金となるが、2分の1を超えない額を資本金に計上せず資本準備金にできる。払込額と資本金は必ずしも一致しない。ただし資本金にしなかった額を自由な利益にすることはできず、資本準備金へ計上する。

[CM-261] 資本金減少の決議
資本金を減少するには、減少額、準備金への計上額、効力発生日を原則株主総会特別決議で定める。資本金を減らすだけで会社の現金が直ちに減るわけではないが、債権者保護手続が原則必要となる。欠損填補のための定時総会等には決議要件の特則がある。

[CM-266] 違法分配の受領者責任
分配可能額規制に違反して金銭等を受領した者は、会社に対し受領財産の帳簿価額相当額を支払う義務を負う。受領者が善意であっても会社に対する支払義務が当然になくなるわけではない。善意受領者との求償関係は別に扱う。

[CM-267] 違法分配の業務執行者責任
違法分配に関する職務を行った業務執行者等は、注意を怠らなかったことを証明しない限り会社へ連帯して支払義務を負う。株主への返還請求とは別に、違法分配を実行した役員等にも会社財産を回復させる責任を負わせる。任務懈怠責任一般との要件の違いに注意する。

[CM-268] 期末欠損の填補責任
分配後の事業年度末に欠損が生じた場合、業務執行者は法定要件の下で欠損額を会社へ支払う責任を負う。分配時点では適法でも期末に欠損が出る局面の責任である。分配可能額を超えた違法分配そのものの責任と区別する。

4-4. 社債

社債は会社に対する債権であり、株式のような構成員の地位ではない。多数の社債権者の利益を効率的に守るため、社債原簿、社債管理者、社債権者集会を用意する。集団的決定で少数者も拘束するからこそ、裁判所の認可などの統制が必要になる。
参照:B-COMP

[CM-269] 募集社債の発行事項
会社は社債を発行でき、募集社債総額、各社債金額、利率、償還方法・期限等の募集事項を決定する。社債は会社への貸付けを細分化した債権であり、株式のような社員としての地位ではない。利払と償還を受ける一方、原則として株主総会の議決権は持たない。

[CM-270] 社債原簿
会社は社債原簿を作成し、社債権者の氏名名称・住所、社債内容等を記載・記録する。誰がどの社債を保有するかを会社側で把握する帳簿である。社債券を発行したか否かと原簿の作成義務は別問題となる。

[CM-271] 社債管理者
会社は法定例外を除き社債管理者を定め、社債権者のため弁済受領・債権保全等の管理を委託しなければならない。多数の社債権者が個別に債権を管理する負担をまとめる制度である。各社債の金額が1億円以上の場合など、法定の設置不要例外がある。

[CM-272] 社債権者集会
社債権者集会は社債の種類ごとに組織され、その決議は原則として裁判所の認可により効力を生ずる。多数決で少数社債権者も拘束するため裁判所の統制を置く。株主総会と異なり、社債権者集会の決議だけで当然に効力が完成するとはしない。

4-5. 持分会社

持分会社では社員が経営を担うことを基本とし、人的な信頼関係を重く見る。そのため持分譲渡に他の社員の承諾を要求し、社員の氏名や責任類型まで定款に記載する。合同会社は全員有限責任なので、出資履行を設立前に済ませるなど債権者保護を図る。社員は従業員を意味しない。
参照:B-COMP

[CM-273] 持分会社定款の共同作成
持分会社を設立するには、社員になろうとする者全員が定款を作成し署名又は記名押印しなければならない。持分会社では定款作成者がそのまま社員となり、株式会社の発起設立と違って公証人の定款認証を要しない。社員は従業員ではなく出資者を指す。

[CM-274] 社員の責任類型
合名会社は全員無限責任、合資会社は無限・有限責任社員、合同会社は全員有限責任社員で構成される。無限責任社員は会社債務について法定の補充的・連帯的な直接責任を負い、合同会社社員は原則として出資価額を限度とする責任にとどまる。

[CM-275] 持分会社の成立
持分会社は本店所在地で設立登記をすることにより成立する。定款を作っただけでは法人格は生じない。設立登記によって会社という独立した権利義務の主体が成立する。

[CM-276] 合同会社社員の出資履行
合同会社の社員になろうとする者は、設立登記までに出資の全額を履行しなければならない。合同会社は全員が有限責任なので、設立前に約束した出資を実際に払い込ませる。労務や信用を出資の目的にすることはできない。

[CM-277] 持分譲渡
持分会社の社員が持分を譲渡するには原則他の社員全員の承諾を要するが、定款で別段の定めを置ける場合がある。人的信頼が強いため株式より譲渡を制限する。業務執行をしない有限責任社員の持分譲渡などには承諾の特則がある。

[CM-278] 社員による業務執行
持分会社の社員は、定款に別段の定めがなければ各自業務を執行する。持分会社は出資と経営を原則一致させる。定款で業務執行社員を一部に限れば、他の社員は原則として日常の業務執行を担わない。

[CM-279] 持分会社の業務決定
業務執行社員が二人以上あるとき、持分会社の業務は原則その過半数で決定する。業務の『意思決定』と、決定した業務の『実行』を区別する。常務は原則各自で行えるが、他の業務執行社員が完了前に異議を述べると単独で進められない。

[CM-280] 持分会社の代表
業務執行社員は原則として各自持分会社を代表し、代表権の内部的制限は善意の第三者に対抗できない。会社を代表して契約する対外権限と、会社内部の決裁制限は別である。会社内部で必要な承認を欠いたことだけで善意の取引相手へ対抗できるとは限らない。

[CM-281] 持分会社社員の競業
業務執行社員は他の社員全員の承認なく、自己又は第三者のため会社の事業部類に属する取引等をしてはならない。社員として得た取引機会を自己の利益へ流す危険を防ぐ。業務執行権のない社員にも一律に同じ規制を及ぼすとはしない。

[CM-282] 持分会社の利益相反取引
業務執行社員が自己又は第三者のため会社と取引するときは、原則他の社員の過半数の承認を要する。競業は原則『他の社員全員』、利益相反取引は原則『他の社員の過半数』という承認要件の差がある。

[CM-283] 持分会社の退社
社員は定款所定の場合のほか、やむを得ない事由による退社、死亡等の法定退社により社員資格を失う。存続期間を定めない場合の任意退社には原則事業年度末・6か月前予告のルールがある。やむを得ない事由による退社は時期の制限を受けない。

[CM-284] 退社社員の持分払戻し
退社社員は持分の払戻しを受け、払戻額は原則退社時の会社財産状況に従って定める。出資時に払い込んだ元の額を必ずそのまま返す制度ではない。会社の利益や損失を反映し、債権者保護による払戻し制限も受ける。

[CM-383] 持分会社定款―目的
持分会社の目的は定款に記載しなければならない。何を事業とする会社なのかを示し、社員の出資先と活動範囲を明確にする。会社の商号や本店所在地とともに基本事項となる。

[CM-385] 持分会社定款―本店所在地
持分会社の本店所在地は定款に記載しなければならない。定款の本店所在地は最小行政区画までの定めで足りる扱いがあり、具体的な番地までの所在場所の決定・登記と区別する。

[CM-386] 持分会社定款―社員
社員の氏名又は名称及び住所は持分会社の定款に記載しなければならない。持分会社では出資者の個性が重要なので社員自体を定款へ記載する。株式会社の通常の株主異動とは扱いが違う。

[CM-387] 持分会社定款―責任類型
各社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかは持分会社の定款に記載しなければならない。誰が会社債務についてどの範囲の責任を負うかを第三者にも明確にするための事項である。

[CM-388] 持分会社定款―出資
社員の出資目的及び価額又は評価標準は持分会社の定款に記載しなければならない。有限責任社員の出資は金銭その他の財産に限られる。出資額は利益配当や払戻し、責任の範囲を考える出発点となる。

4-6. 種類株式と事業譲渡

株式の内容を変えて資金調達と経営支配を設計できるが、公開会社か非公開会社かで許容範囲が異なる。種類ごとの差と、特定の株主ごとの差は別制度である。重要な事業の譲渡は会社の基盤を変えるため株主総会の関与を要し、単に一つの高価な資産を売る場合とは区別する。
参照:B-COMP

[CM-357] 非公開会社の株主別取扱い―残余財産
公開会社でない株式会社は、残余財産分配について株主ごとに異なる取扱いを定款で定められる。属人的な差を許す特則であり、株式の種類ごとの内容差とは異なる。対象は非公開会社の法定事項に限られる。

[CM-358] 非公開会社の株主別取扱い―議決権
公開会社でない株式会社は、株主総会の議決権について株主ごとに異なる取扱いを定款で定められる。非公開会社では『1株1議決権』からの属人的な例外を定款に設け得る。単なる取締役会決議だけで株主の議決権を自由に変更することはできない。

[CM-359] 種類株式―残余財産
株式会社は残余財産分配について内容の異なる二以上の種類の株式を発行できる。優先的な残余財産分配は会社が解散・清算する場面の権利設計である。通常時の剰余金配当の優先とは別々に定められる。

[CM-360] 種類株式―議決権制限
株式会社は株主総会で議決権を行使できる事項について内容の異なる種類株式を発行できる。すべての議案で議決権を持たせない設計も、一部の議案だけ認める設計もある。公開会社には議決権制限株式の割合に制限がある。

[CM-362] 種類株式―取得請求権
株式会社は株主が会社に取得請求できるかについて内容の異なる種類株式を発行できる。株主が取得を求める権利を持つ。いつ会社が強制的に取得できるかを定める取得条項付株式とは、開始する側が逆である。

[CM-363] 種類株式―取得条項
株式会社は一定事由の発生時に会社が取得できるかについて内容の異なる種類株式を発行できる。定款所定の事由が生じれば会社が取得できる仕組みである。会社が理由なく任意にいつでも取得できるという意味ではない。

[CM-364] 種類株式―全部取得条項
株式会社は株主総会決議によりその全部を取得できる種類株式を発行できる。個別の発動事由ではなく、株主総会の決議によって当該種類の全部を取得する。少数株主排除にも用いられるため価格等の救済が置かれる。

[CM-365] 種類株式―拒否権
株式会社は一定事項につき種類株主総会決議を要する拒否権付種類株式を発行できる。通常の機関決定に加えてその種類株主総会の承認が必要となる。『黄金株』と呼ばれることがあるが、法的効果は定款で定めた事項に限られる。

[CM-366] 種類株式―役員選任権
公開会社及び指名委員会等設置会社を除き、株式会社は種類株主総会で取締役又は監査役を選任する旨の種類株式を設けられる(会社法108条1項9号・同項ただし書)。監査等委員会設置会社を含む「委員会型すべて不可」と広げない。ただし監査等委員会設置会社には監査役を置けないので、設置機関に応じて選任対象を確認する。

[CM-389] 事業重要部分譲渡の承認
事業の重要な一部を譲渡し、その譲渡資産帳簿価額が総資産額の5分の1を超える株式会社は原則株主総会特別決議を要する。『事業の重要な一部』かという質的判断と、譲渡資産額の5分の1基準を分ける。単に価額の高い一資産を売れば常に事業譲渡になるわけではない。

[CM-390] 他社事業全部譲受けの承認
他の会社の事業の全部を譲り受ける株式会社は原則として株主総会特別決議の承認を要する。譲受会社が買うのは他社事業の全部である。一部譲受けを全部譲受けと混同せず、簡易手続などの法定例外も区別する。

4-7. 解散・清算

解散は通常の営業を終えて会社を消滅へ向かわせる原因であり、清算は残った取引・債権・債務を処理する段階である。まず債権者を保護し、最後に余りを株主へ返す。合併では包括承継、破産では破産手続によって処理するため、解散原因にかかわらず同じ清算手順を取るわけではない。
参照:B-COMP

[CM-310] 清算時の債権申出公告
清算人は就任後遅滞なく、2か月以上の申出期間を定めて債権者へ公告し、知れたる債権者には各別催告する。残余財産を先に株主へ配って債権者を害さないための手続である。知れている債権者は申出をしなくても清算から除斥できない。

[CM-312] 清算結了
清算人は清算事務終了後に決算報告を作成して株主総会承認を受け、清算結了登記をする。解散登記と清算結了登記は別である。清算結了は債権回収・債務弁済・残余財産分配を終えた後に問題となる。

[CM-313] 特別清算
清算株式会社に清算遂行の著しい支障又は債務超過の疑いがあるとき、裁判所は申立てにより特別清算開始を命じ得る。裁判所の監督下で清算を進める株式会社特有の手続であり、再建型の民事再生とは異なる。通常清算では処理困難な状態に対応する。

[CM-392] 解散事由―合併
株式会社は消滅会社となる合併によって解散する。消滅会社の権利義務は合併相手へ包括承継されるため、通常の清算を行わない。解散すれば必ず清算人が個別弁済するというわけではない。

[CM-393] 解散事由―破産手続開始
株式会社は破産手続開始決定によって解散する。清算すべき状況になるが、財産処分・配当は原則として破産手続で行う。解散の効果と破産手続の効果を重ねて考える。

[CM-394] 解散事由―解散命令等
株式会社は会社法824条の解散命令又は833条の解散判決によって解散する。会社の違法・不当な運営等に対する解散命令と、一定の株主による解散判決請求は要件・請求主体が異なる。

[CM-395] 清算人の現務結了
清算人は現務を結了する職務を行う。新しい営業を自由に拡大する段階ではなく、残っている取引を終わらせる段階である。ただし清算目的に必要な行為はできる。

[CM-396] 清算人の債権取立て・債務弁済
清算人は清算株式会社の債権を取り立て、債務を弁済する職務を行う。会社に入るべき金を回収して債務を支払う。債権者への法定手続と優先関係を無視して株主へ配ってはならない。

[CM-397] 清算人の残余財産分配
清算人は残余財産を株主へ分配する職務を行う。債務弁済等を済ませた後の残りを株主へ返す。『残余』という順序そのものが債権者保護の核心である。

4-8. 利益供与と株主名簿

株主権を公正に行使できることは会社統治の前提である。利益供与禁止は株主の権利行使を会社財産で買うことを防ぎ、株主名簿閲覧は株主同士の働き掛け等を可能にする。閲覧の濫用を防ぐ拒絶事由は法定されており、別種の会計帳簿の拒絶事由をそのまま流用しない。
参照:B-COMP

[CM-398] 株主等の権利行使に関する利益供与禁止
株式会社は、自己又は子会社の計算で、株主等の権利行使に関して何人にも財産上の利益を供与してはならない。総会屋対策など、株主の権利行使を金銭で左右することを防ぐ規制である。受領者が株主本人でない場合も規制され得る。

[CM-399] 無償供与の推定
株式会社が特定株主へ無償で財産上の利益を供与したときは、株主の権利行使に関する供与と推定される。会社から特定株主への贈与は不自然なので、権利行使との結び付きを推定する。推定規定であり、すべての贈与が反証不能の違法となるわけではない。

[CM-400] 著しく低い対価による供与の推定
特定株主への有償供与で会社又は子会社の受けた利益が著しく少ないときも権利行使に関する供与と推定される。形式上売買でも、相場に比べ著しく安い譲渡などで実質的に利益を与えれば推定が働く。無償か有償かの名目だけで逃れられない。

[CM-401] 利益受領者の返還義務
違法な利益供与を受けた者は、その利益を会社又は子会社へ返還しなければならない。受領者は利益を返し、会社又は子会社に給付した対価があれば法定の返還関係を処理する。取締役の責任だけでなく受領者にも回復義務がある。

[CM-402] 関与取締役等の支払義務
違法な利益供与に関与した法定の取締役等は、原則として会社に供与利益価額を連帯して支払う義務を負う。受領者の返還義務と関与役員等の責任を分ける。全取締役が役職だけで当然に負うのではなく、法定の関与と責任主体を確認する。

[CM-403] 関与取締役等の無過失証明
利益を供与した取締役以外の関与取締役等は、職務上の注意を怠らなかったことを証明すれば支払義務を免れる。実際に供与した取締役は無過失を証明してもこの免責を使えない。周辺の関与者と実行者を区別する。

[CM-404] 利益供与責任免除の総株主同意
違法な利益供与に関与した取締役等の支払義務は総株主の同意がなければ免除できない。単なる株主総会の多数決では免除できない。会社財産と株主の公正な権利行使を守るため、厳しい免除要件を置く。

[CM-405] 株主名簿の本店備置き
株式会社は株主名簿を本店に備え置かなければならない。株主名簿は会社が株主権行使の相手を把握する基盤となる。株主名簿管理人を置く場合は営業所での備置きが認められる。

[CM-406] 株主の株主名簿閲覧謄写請求
株主は営業時間内いつでも、請求理由を明らかにして株主名簿の閲覧又は謄写を請求できる。株主名簿の閲覧には会計帳簿の3%保有要件はない。ただし請求目的が法定拒絶事由に当たれば拒める。

[CM-407] 株主名簿閲覧請求の理由明示
株主又は債権者が株主名簿の閲覧謄写を請求するときは請求理由を明らかにしなければならない。誰に働きかけて議決権を集めるのかなど、権利行使との関係を示す。理由の記載を求めることと、目的が正当かの実体判断は別である。

[CM-408] 株主名簿閲覧の拒絶事由
会社は権利確保・行使以外の目的など会社法125条3項各号の事由があるとき株主名簿の閲覧謄写を拒める。単なる『競争会社の株主である』ことを現在の株主名簿の当然の拒絶事由としない。会計帳簿の閲覧拒絶事由をそのまま移植しない。

[CM-409] 親会社社員の株主名簿閲覧
親会社社員は権利行使に必要があるとき、裁判所の許可を得て子会社の株主名簿を閲覧又は謄写できる。子会社の直接の株主ではないため裁判所の許可を経る。親会社社員の利益保護と子会社の情報管理を調整する制度である。

[CM-530] 株主名簿管理人設置時の備置場所
株主名簿管理人があるときは、その営業所に株主名簿を備え置くことができる。会社が株主名簿管理を外部へ委ねる場合の備置きの特則である。本店以外にあるから直ちに違法としない。

[CM-531] 債権者の株主名簿閲覧謄写請求
会社債権者は営業時間内いつでも、請求理由を明らかにして株主名簿の閲覧又は謄写を請求できる。債権者も自己の権利確保のために利用できる。株主と同様に理由明示と法定拒絶事由の審査を受ける。

4-9. 特別支配株主による売渡請求

90%以上の議決権を持つ者に残りの株式を一斉取得させる制度である。少数株主の意思を超えて権利を奪うため、会社承認、事前通知、差止め、価格決定、取得無効の訴えが組み合わされる。価格だけを争うのか取得自体を争うのかで手段と期間が異なる。
参照:B-COMP

[CM-412] 特別支配株主の議決権要件
対象会社以外の者とその完全子法人が対象会社議決権の90%以上又は定款のより高い割合を有するとき、その者は特別支配株主となる。90%は株式数そのものではなく法定の議決権割合で判断する。完全子法人による間接保有も法定範囲で合算する。

[CM-413] 特別支配株主の株式売渡請求
特別支配株主は、対象会社と自己を除く株主全員に対し、その株式全部の売渡しを請求できる。少数株主の意思に反して全株式を取得できる例外的手段である。そのため会社承認・通知・価格決定・差止めなどの保護が組み合わされる。

[CM-415] 対象会社の承認
特別支配株主が株式等売渡請求をするには対象会社へ法定事項を通知して承認を受けなければならない。取締役会設置会社では取締役会決議による承認が必要である。90%を持つだけで自動的に残株式が移るわけではない。

[CM-417] 売渡株主等への事前通知
対象会社は承認したとき取得日の20日前までに売渡株主等へ法定事項を通知しなければならない。取得前に株主が差止めや価格決定の申立てをできる時間を確保する。事後に通知すれば足りるとはしない。

[CM-418] 売渡株主の差止請求
法令違反又は対価等の著しい不当性により不利益を受けるおそれがある売渡株主は取得差止めを請求できる。取得そのものを止める救済であり、公正な価格を決める手続とは別である。対価の『著しい不当』と単なる価格への不満を区別する。

[CM-419] 売買価格決定の申立て
売渡株主等は取得日の20日前から前日までに裁判所へ売買価格決定を申し立てられる。申立期間は取得後ではなく取得前に設定されている。取得無効の訴えの期間とは別に管理する。

[CM-420] 取得日の株式等取得
特別支配株主は取得日に売渡株式等の全部を取得する。個々の株主の譲渡承諾を得て通常売買する制度ではない。法定手続の完了により取得日に一斉に権利が移る。

[CM-421] 公開会社の売渡株式等取得無効の訴え
公開会社の売渡株式等取得の無効は、法定提訴権者が取得日から6か月以内に無効の訴えで主張する。会社の対外関係を安定させるため無効主張を法定の訴えと短い期間に集中させる。非公開会社では1年となる。

[CM-532] 非公開会社の売渡株式等取得無効の訴え
非公開会社の売渡株式等取得の無効は、法定提訴権者が取得日から1年以内に無効の訴えで主張する。公開会社の6か月と非公開会社の1年を対比する。単なる取消訴訟として自由な期間に提起できるわけではない。

4-10. 多重代表訴訟

子会社役員が子会社へ損害を与えると親会社の株式価値も害され得る。しかし親会社株主は通常、子会社の直接株主ではない。この隔たりを例外的に超える制度であり、完全親子関係、重要性、持株割合、事前請求、待機期間などで対象を絞る。
参照:B-COMP

[CM-426] 最終完全親会社株主の持株要件
原則6か月継続して最終完全親会社等の議決権又は発行済株式の1%以上を有する株主は特定責任追及の提訴請求をできる。完全親子会社関係を通じて親会社株主の利益が害される場合の例外的な責任追及である。普通の株主代表訴訟の要件と混同しない。

[CM-427] 非公開親会社の継続保有不要
最終完全親会社等が公開会社でない場合、多重代表訴訟の原告に6か月の継続保有要件は課されない。公開会社の短期買付けによる訴訟濫用を防ぐ継続保有要件を、非公開会社にはそのまま課さない。

[CM-428] 特定責任の重要性要件
多重代表訴訟の対象は、原因事実発生日の子会社株式簿価が最終完全親会社等の総資産額の5分の1を超える子会社の役員等の責任である。重要な完全子会社の役員責任に対象を絞る。5分の1の基準は、親会社株主自身の持株割合ではなく子会社株式の帳簿価額である。

[CM-429] 不正目的による請求の排除
株主又は第三者の不正利益を図り、又は会社等に損害を加える目的の多重代表訴訟提訴請求は許されない。会社の利益回復のための制度を株主の嫌がらせや私的利益獲得に転用することを排除する。

[CM-430] 親会社損害がない場合の排除
特定責任の原因事実により最終完全親会社等に損害が生じていない場合は多重代表訴訟提訴請求をできない。子会社に損害があれば常に親会社株主が訴えられるとはしない。親会社側の経済的利益にも影響することが必要となる。

[CM-431] 多重代表訴訟の提訴請求前置
適格株主はまず子会社に対し、書面等で特定責任追及の訴えを提起するよう請求しなければならない。まず権利者たる子会社に自ら訴える機会を与える。提訴先の請求相手は原則として親会社ではない。

[CM-432] 多重代表訴訟の60日待機
子会社が提訴請求から60日以内に特定責任追及の訴えを提起しないとき、請求株主は自ら提起できる。会社自身による訴訟判断の機会と、放置による不利益を調整する待機期間である。60日経過だけで原告適格の他の要件を充足するわけではない。

[CM-433] 多重代表訴訟の緊急例外
60日待つと子会社に回復不能の損害が生ずるおそれがある場合、請求株主は直ちに特定責任追及の訴えを提起できる。事前請求と待機で損害が不可逆に拡大する局面を救う。単に早く訴えたいという便宜では足りない。

4-11. 会社補償・役員賠償責任保険

適切な職務執行でも訴えられる危険があるため、役員の防御費用や第三者責任を支援する仕組みを置く。一方、会社への責任を無条件に会社へ戻せば責任追及が空洞化する。防御費用、損害賠償等の損失、悪意重過失、不正目的を分け、会社補償と保険を区別する。
参照:B-COMP

[CM-434] 補償契約内容の決定機関
会社補償契約の内容は、株主総会又は取締役会設置会社では取締役会の決議で決定しなければならない。役員を守る契約であるため、本人の独断で会社に負担させない。取締役会設置会社では取締役会の権限となる。

[CM-435] 防御費用の補償
会社は補償契約により、役員等が職務執行に関する違法疑惑又は責任追及請求へ対処するため支出する費用を補償できる。違法と疑われただけで最終的に責任が成立しない役員もいるため、防御費用を会社負担にできる。防御費用の補償と損害賠償金の補償は別の範囲制限を受ける。

[CM-436] 第三者損害の補償
会社は補償契約により、役員等が職務執行に関して第三者損害を賠償し又は和解金を支払う損失を補償できる。職務に伴う第三者責任を会社が引き受ける制度である。会社自身への責任を同じ会社が無条件に肩代わりすれば責任追及が空洞化するため禁止範囲がある。

[CM-437] 通常必要額超過費用の補償禁止
会社は防御費用のうち通常要する額を超える部分を補償できない。弁護士費用等をいくらでも補償してよいわけではない。事案に照らして通常必要な範囲を超える額を除く。

[CM-438] 会社に対する任務懈怠責任部分の補償禁止
役員等が会社に会社法423条1項の責任を負う場合、会社は第三者責任に係る損失のうち当該責任部分を補償できない。役員の任務懈怠により会社が本来回復すべき損害の部分を、補償という名目で会社負担へ戻すことはできない。

[CM-439] 悪意重過失による損失の補償禁止
役員等が悪意又は重大な過失により第三者責任を負う場合、会社はその損失を補償できない。ここで制限されるのは損害賠償等の『損失』の補償である。疑惑へ対処する防御費用の規律と混ぜて、悪意重過失なら一切の費用補償が不可能と単純化しない。

[CM-440] 不正目的判明時の返還請求
防御費用補償後に役員等の不正利益目的又は加害目的が判明したとき、会社は補償額の返還を請求できる。事後に不正目的が判明した場合まで会社が役員の防御費用を最終負担する必要はない。補償契約を結んだことは不正行為の免罪符にならない。

[CM-442] D&O保険内容の決定機関
役員等賠償責任保険契約の内容は、株主総会又は取締役会設置会社では取締役会の決議で決定しなければならない。保険会社へリスクを移転する点で、会社自身が支払う会社補償と異なる。保険料を会社が払うことも含め機関決定で統制する。

[CM-443] D&O保険と利益相反規制の特則
取締役又は執行役を被保険者とするD&O保険契約には、法定範囲で利益相反取引規制を適用しない。一般の利益相反取引手続との二重適用を整理する特則である。会社法430条の3による内容決定の手続まで不要になるわけではない。

[CM-444] D&O保険と自己契約規制の特則
法定決議で内容を決定したD&O保険契約の締結には民法108条の自己契約規制を適用しない。自分の利益にもなる契約を会社代表者として結ぶ点の形式的な問題を、法定機関の決議で統制する。無承認の自己契約一般を許す規定ではない。

4-12. 手形・小切手

手形は金銭支払の信用を証券に載せて流通させる制度である。形式を厳格にする一方、裏書の連続や抗弁切断で取得者を保護する。まず為替手形は第三者への委託、約束手形は自分の支払約束、小切手は銀行等へ即時の支払を委託する道具という差を押さえる。その上で方式、交付、裏書、善意取得、呈示、不払、遡求、時効の順に読む。
参照:B-BILL, B-CHECK

[CM-314] 為替手形必要記載―手形文句
証券本文中に為替手形であることを示す文字を用いることは為替手形の必要的記載事項である。手形という厳格な証券債務を負う意思を証券上で明確にする要件である。単に金銭支払を約束したメモが当然に為替手形になるわけではない。

[CM-315] 約束手形必要記載―手形文句
証券本文中に約束手形であることを示す文字を用いることは約束手形の必要的記載事項である。約束手形は振出人自身が支払を約束する二者関係を基本とする。振出人が別の支払人へ支払を委託する為替手形と区別する。

[CM-316] 白地手形の補充
必要的記載の一部を欠く証券も補充権を伴って交付されれば、その補充により完成した手形となる。白地は単なる書き忘れではなく、受取人等に後から埋める権限を与えて交付した状態である。補充権の範囲と、完成後の善意取得者保護を分ける。

[CM-317] 手形行為独立の原則
ある署名が無能力・偽造等で無効でも、他の署名者の手形債務は原則として影響を受けない。各署名者が自分の署名について独立の証券責任を負うためである。偽造署名が一つあれば証券上の全債務が消えるという制度ではない。

[CM-318] 手形の無権代理
代理権なく手形に代理署名した者は自ら手形債務を負い、支払えば本人と同じ権利を取得する。本人に効果が帰属しないとき、代理名義で署名した者自身を証券上の責任主体とする。通常の民法上の無権代理人責任と要件・責任内容が同一とは限らない。

[CM-319] 手形署名の偽造
偽造された名義人は手形債務を負わず、偽造者の責任は手形上の表示と民事責任を分けて検討する。『本人の署名がある外観』と『本人が署名した事実』を区別する。偽造者自身の手形責任が当然に生じるとせず、不法行為責任等を別途検討する。

[CM-320] 裏書の方式
裏書は手形又は補箋に記載して裏書人が署名し、手形を交付して行う。証券上の裏書の記載と現物の交付が必要である。『裏書』は単に書面の裏面に何かを書くという意味ではなく、手形権利を移すための法律行為である。

[CM-321] 白地裏書
被裏書人を記載せず裏書人が署名する白地裏書も有効である。白地裏書の所持人は自己又は他人の名で補充でき、そのまま交付して譲渡することもできる。無記名のままでは絶対に流通できないとはしない。

[CM-322] 裏書の権利移転的効力
有効な裏書と交付により、手形から生じる一切の権利が被裏書人へ移転する。権利移転に伴い、流通保護のため人的抗弁の切断等が問題となる。手形外の売買代金債権まで当然に移る制度ではない。

[CM-323] 裏書の担保的効力
裏書人は反対文言がない限り、引受けと支払を担保し、遡求義務を負う。後の所持人が主債務者から支払を受けられなかった場合に備える責任である。無担保裏書の文言があれば担保的効力は排除できる。

[CM-324] 裏書の資格授与的効力
裏書が連続する手形の所持人は適法な所持人とみなされ、手形上の権利を行使できる形式的資格を得る。裏書の連続は証券の形式上の連鎖で判断する。実質的な権利帰属の最終確定とは異なり、偽造や無権利取得が問題になり得る。

[CM-325] 手形の善意取得
形式的資格ある所持人から手形を取得した者は、悪意又は重大な過失がない限り、譲渡人が無権利でも手形上の権利を取得する。流通する証券を外観に従って安全に取得できるようにする。譲渡人の無権利を知っていた者や、重大な不注意で知らなかった者は保護しない。

[CM-326] 人的抗弁の切断
手形債務者は所持人に対し、振出人又は以前の所持人との人的関係に基づく抗弁を原則対抗できない。前の当事者間の『売買が解除された』『代金は支払済み』などを後の取得者へ無制限に持ち出すと手形の流通が止まるためである。

[CM-327] 害意取得者の例外
所持人が手形取得時に債務者を害することを知って取得したとき、債務者は人的抗弁を対抗できる。単に原因関係に問題があることを知るだけで常に害意取得となるわけではなく、その取得によって債務者が抗弁を使えず害されることの認識が問題になる。

[CM-328] 為替手形の引受け
支払人は手形面への引受文言と署名により、満期に支払う主たる手形債務を負う。為替手形の支払人は名前が記載されただけでは主たる手形債務者にならず、引受けによってその地位を得る。約束手形の振出人は最初から主債務者である。

[CM-329] 手形保証の方式
手形保証は手形又は補箋に保証文言を記載して保証人が署名する方式で行う。誰の債務を保証するかを明示する。手形の表面に支払人又は振出人以外の署名だけがある場合等には保証とみなす特則がある。

[CM-330] 支払呈示
所持人は法定の呈示期間内に支払人等へ手形を呈示し、支払を求めなければ裏書人等への遡求権を失い得る。支払を求める機会を主債務者に与え、遡求義務者へ早期に不払を知らせるための手続である。呈示を怠っても主債務者への請求がすべて消えるわけではない。

[CM-331] 支払人の免責
満期に支払う者は、悪意又は重大な過失がなければ、裏書連続を調査して支払うことで免責される。支払人は裏書人の署名がすべて真正かまで通常調査する義務を負わない。形式的連続の確認と悪意・重過失の有無を分ける。

[CM-332] 遡求権の発生
満期に支払がないとき、所持人は適時の呈示と原則拒絶証書作成を経て振出人・裏書人等へ遡求できる。遡求は主債務者以外の手形関係者への支払請求である。無費用償還文句があれば拒絶証書作成は免除され得るが、呈示等まで当然に免除されない。

[CM-333] 引受人等に対する時効
為替手形引受人に対する請求権と約束手形振出人に対する請求権は満期から3年で時効消滅する。3年は手形の主債務者への請求の期間である。裏書人等への1年、裏書人相互の6か月と、責任の位置に応じて短くなる。

[CM-334] 所持人の遡求権の時効
所持人の裏書人及び振出人に対する請求権は、適法な拒絶証書作成日又は無費用償還文句があるときは満期日から1年で時効消滅する。所持人から遡求義務者へ請求する段階の時効であり、振出日から1年ではない。無費用償還文句の有無で起算点を確認する。

[CM-335] 利得償還請求
手形上の権利が時効又は保全手続欠缺で消滅しても、振出人等が受けた利益の限度で所持人は償還請求できる。手形権利が消えたのに相手だけが無理由に利益を保持することを調整する。手形金全額を必ず回復する制度ではなく、相手の受益が限度となる。

[CM-336] 小切手必要記載―小切手文句
証券本文中に小切手であることを示す文字を用いることは小切手の必要的記載事項である。小切手であることの表示により、小切手法の厳格な証券関係を成立させる。受取人の名称は手形と異なり常に必要な記載ではない。

[CM-337] 小切手の支払人
小切手は、振出人が処分できる資金を有する銀行等を支払人として振り出す。小切手は預金等の資金を引き出して支払う道具である。ただし資金がないことだけで証券自体が当然に無効になるとはしない。

[CM-338] 小切手の一覧払性
小切手は一覧払であり、これに反する記載は記載しないものとみなされる。将来の日を支払日と書いても小切手法上は提示時に支払う。信用供与を予定する手形と、即時の支払手段である小切手の違いが表れる。

[CM-339] 小切手の呈示期間
同一国内で振出し・支払をする小切手は、振出日から10日以内に支払呈示しなければならない。10日は国内小切手の短い流通を予定した保全期間である。期間を過ぎることと、銀行が絶対に支払えなくなることは別問題である。

[CM-340] 支払委託取消し
小切手の支払委託取消しは呈示期間経過後にのみ効力を生じ、取消しがなければ支払人は期間経過後も支払える。期間内は所持人の呈示機会を確保する。振出人が死亡・行為能力を喪失しても、それだけで小切手の効力がなくなるわけではない。

[CM-341] 一般線引小切手の支払先
一般線引小切手の支払人は、銀行又は自己の取引先に限り支払うことができる。線引は盗難等による不正な現金化を防ぎ、銀行取引を通じて支払先を追跡しやすくする仕組みである。

[CM-342] 小切手の引受禁止
小切手は引受けをすることができず、引受けの記載は記載しないものとみなされる。小切手は銀行による引受けを予定しない支払証券である。支払人たる銀行が為替手形の引受人と同じ主債務を負うと考えない。

[CM-343] 小切手の遡求
適時呈示して支払拒絶を証明した所持人は、振出人・裏書人等に遡求できる。不払を証明する方法には拒絶証書だけでなく、支払人の宣言等の法定の代替方法がある。

[CM-344] 小切手債権の時効
所持人の裏書人・振出人等に対する請求権は呈示期間満了日から6か月で時効消滅する。手形の3年・1年とは異なり、小切手所持人の遡求権は呈示期間満了から6か月である。振出日から6か月と起算点をずらさない。

[CM-469] 為替手形必要記載―無条件支払委託
一定金額を支払う旨の無条件の委託は為替手形の必要的記載事項である。条件付きの支払委託では証券だけから確実な支払義務を読み取れない。金額の確定と無条件性が流通の基盤となる。

[CM-470] 為替手形必要記載―支払人
支払人の名称は為替手形の必要的記載事項である。為替手形では振出人が第三者へ支払を依頼するため、誰が支払う人かを証券上で特定する必要がある。

[CM-471] 為替手形必要記載―満期
満期の表示は為替手形の必要的記載事項である。ただし満期を書かなければ必ず無効ではなく、一覧払とみなす補充規定がある。必要記載事項と欠缺の効果を一体で覚える。

[CM-472] 為替手形必要記載―支払地
支払をする地の表示は為替手形の必要的記載事項である。支払地は呈示する場所を定める。記載欠缺には支払人に付記した地を用いる法定補充がある。

[CM-473] 為替手形必要記載―受取人
支払を受ける者又はその指図人の名称は為替手形の必要的記載事項である。誰に又は誰の指図先に支払うかを明確にする。小切手では無記名式が可能である点と区別する。

[CM-474] 為替手形必要記載―振出日
為替手形を振り出す日の日付は必要的記載事項である。振出日は能力、呈示期間、日付後定期払の満期等を判断する基準となる。法定の欠缺補充がある事項とない事項を分ける。

[CM-475] 為替手形必要記載―振出地
為替手形の振出地は必要的記載事項である。振出地は証券の発行場所を示すが、欠けても振出人名称に付記された地で補充され得る。

[CM-476] 為替手形必要記載―振出人署名
振出人の署名は為替手形の必要的記載事項である。誰が証券上の責任を負う行為をしたかを示す中心的要件である。署名の偽造・代理・権限の問題は独立して検討する。

[CM-477] 為替手形の満期記載欠缺
満期の記載がない為替手形は一覧払として扱われる。提示を受けた時に支払う手形として存続させる規定である。満期欄の空白だけを見て直ちに無効としない。

[CM-478] 為替手形の支払地記載欠缺
別段の表示がなければ支払人名称に付記した地を支払地かつ支払人住所地とみなす。法は証券上の別の記載から必要事項を補う。付記地が複数の場合など、記載全体から支払地が特定されるかを確認する。

[CM-479] 為替手形の振出地記載欠缺
振出地の記載がない為替手形は振出人名称に付記した地で振り出したものとみなす。証券上の振出人の表示に付随する地を使うのであって、実際の発行場所を外部証拠だけで自由に補充するという意味ではない。

[CM-480] 約束手形必要記載―無条件支払約束
一定金額を支払う旨の無条件の約束は約束手形の必要的記載事項である。約束手形の振出人が自分で金額を支払う約束をする。為替手形・小切手の『支払委託』との違いが最も基本的な区別である。

[CM-481] 約束手形必要記載―満期
満期の表示は約束手形の必要的記載事項である。満期が欠けた約束手形も一覧払とみなされる。必要事項に挙げられていることと、欠缺時の救済の存在は両立する。

[CM-482] 約束手形必要記載―支払地
支払をする地の表示は約束手形の必要的記載事項である。支払地の記載がなければ振出地を支払地とする補充がある。為替手形の支払人付記地というルールと混同しない。

[CM-483] 約束手形必要記載―受取人
支払を受ける者又はその指図人の名称は約束手形の必要的記載事項である。約束手形は誰に支払うかの記載を必要とする。白地手形として交付する場合は補充権の問題となる。

[CM-484] 約束手形必要記載―振出日
約束手形を振り出す日の日付は必要的記載事項である。振出日から一定期間後に満期となる手形では、その日付が満期計算の出発点にもなる。

[CM-485] 約束手形必要記載―振出地
約束手形の振出地は必要的記載事項である。ただし振出地の記載がない場合、振出人の名称に付記した地で振り出したものとみなされる。証券の他の記載による法定の補充があるため、欠缺だけで直ちに無効としない。

[CM-486] 約束手形必要記載―振出人署名
振出人の署名は約束手形の必要的記載事項である。約束手形ではこの振出人が主たる支払義務者となる。為替手形の支払人による引受けを待つ構造ではない。

[CM-487] 約束手形の満期記載欠缺
満期の記載がない約束手形は一覧払として扱われる。一覧払では所持人の支払呈示が満期を到来させる。振出日を満期とみなすという規定ではない。

[CM-488] 約束手形の支払地記載欠缺
別段の表示がなければ約束手形の振出地を支払地かつ振出人住所地とみなす。振出人本人が支払う約束手形の構造に対応した補充規定である。為替手形の補充規定とは参照する場所が違う。

[CM-489] 約束手形の振出地記載欠缺
振出地の記載がない約束手形は振出人名称に付記した地で振り出したものとみなす。振出人名称の横などに示された地が補充元となる。証券上に補充可能な地もなければ必要事項欠缺が問題となる。

[CM-490] 小切手必要記載―無条件支払委託
一定金額を支払う旨の無条件の委託は小切手の必要的記載事項である。小切手も振出人から銀行等への支払委託である。売買の解除等を支払条件として証券に書くことは無条件性を害する。

[CM-491] 小切手必要記載―支払人
支払人の名称は小切手の必要的記載事項である。支払人は通常銀行であり、引受人として証券債務を負う立場ではない。資金契約と証券上の遡求責任を分ける。

[CM-492] 小切手必要記載―支払地
支払をする地の表示は小切手の必要的記載事項である。支払地記載がない場合にも法定補充がある。支払人名称に付記された地等を順に用いて判断する。

[CM-493] 小切手必要記載―振出日
小切手を振り出す日の日付は必要的記載事項である。小切手は振出日から呈示期間を計算するため、この日付が重要になる。先日付小切手でも法定の一覧払性は失われない。

[CM-494] 小切手必要記載―振出地
小切手の振出地は必要的記載事項である。国をまたぐ場合の呈示期間等にも関係する。振出人名称に付記された地による補充が認められる。

[CM-495] 小切手必要記載―振出人署名
振出人の署名は小切手の必要的記載事項である。署名者の小切手上の責任を生む基礎である。振出人と支払銀行を同じ責任主体として扱わない。

[CM-496] 小切手の支払地記載欠缺
別段の表示がなければ支払人名称に付記した地を小切手の支払地とみなす。付記地が複数あるときは最初の地、付記地等がないときは支払人の主たる営業所所在地など、法定の補充順序がある。

[CM-497] 小切手の振出地記載欠缺
振出地の記載がない小切手は振出人名称に付記した地で振り出したものとみなす。欠缺が直ちに無効へつながるかは補充規定の有無で決まる。手形・小切手の形式要件の共通した読み方である。

[CM-498] 手形債務の無因性
有効に成立した手形債務は原因関係の有効性や存否から形式上独立する。売買等の原因債権と、証券の署名から生じる手形債権は別である。ただし直接当事者間で原因関係の抗弁が使えなくなるわけではない。

[CM-499] 直接当事者間の原因関係抗弁
手形の直接当事者間では、原因関係の無効・消滅などに基づく人的抗弁を主張できる。『無因性』は振出人が直接の受取人に何の抗弁も言えないという意味ではない。流通後の第三取得者保護と区別する。

[CM-500] 原因債権と手形債権の併存
既存原因債務のため手形を交付しても、特段の意思がなければ原因債権と手形債権は併存する。普通は手形を支払のために渡したのであり、渡した瞬間に現金債務が消えたわけではない。代物弁済として渡した等の特約があれば結論が変わる。

[CM-501] 手形行為成立と交付
手形行為は署名だけでは足りず、原則として手形を相手方へ交付する意思に基づく交付を要する。署名済み手形を机の中に保管しただけでは通常の手形行為は完成しない。ただし盗難等で流通した場合には外観責任が別途問題となる。

[CM-502] 交付欠缺と権利外観責任
交付を欠く手形でも署名者に外観作出の帰責性があり善意無重過失の取得者が信頼したときは手形責任を認め得る。本来の交付がなくても、流通外観の作出を誰に帰責できるかと取得者の信頼を調整する。紛失したら常に責任を負うという機械的な結論ではない。

[CM-503] 融通手形の直接当事者間抗弁
融通手形の振出人は融通受取人に対し、自己へ支払請求しないとの原因関係上の抗弁を主張できる。融通手形は実際の売買代金等なしに他人の資金調達のため振り出す手形である。融通を受けた本人が振出人へ請求することは合意に反する。

[CM-504] 融通手形であることを知る第三取得者
第三取得者が融通手形であることを知るだけでは、振出人は原則として人的抗弁を対抗できず手形責任を負う。融通目的を知って割り引く取引も予定されているため、知っているだけでは抗弁切断の例外にならない。害意取得は別の評価となる。

[CM-505] 融通手形支払後の求償
融通者が手形金を支払ったときは、融通合意等の原因関係に基づき融通受取人へ償還を求める。手形の支払義務を果たしたことと、内部関係で誰が最終負担するかは別である。最終的には資金を融通された側に負担を求める。

[CM-506] 白地補充権濫用の対抗制限
補充合意違反は、所持人が違反を知り又は重大な過失で知らなかった場合に限り対抗できる。後の取得者が補充権濫用について悪意・重過失であるかが問題となる。直接の補充者と善意の後取得者を同列に扱わない。

[CM-507] 取立委任裏書の権利行使
取立委任文言のある裏書を受けた所持人は手形から生じる一切の権利を行使できる。取立ての代理として権利を行使できるのであり、経済的な権利を自己のために取得した通常の譲受人とは違う。

[CM-508] 取立委任裏書の再裏書
取立委任裏書を受けた所持人は代理のための裏書だけをすることができる。他人の取立てを代行する立場なので、自分の完全な権利として通常の権利移転裏書をすることはできない。

[CM-509] 取立委任裏書と抗弁
取立委任裏書の所持人に対しては、債務者は裏書人に対抗できた抗弁だけを対抗できる。委任者本人が持つ以上の権利を代理所持人へ与える必要はない。通常裏書の人的抗弁切断をそのまま適用しない。

[CM-510] 満期後裏書の原則的効力
満期後の裏書も原則として満期前の裏書と同一の手形法上の効力を有する。『満期を過ぎた』だけで直ちに通常債権譲渡へ変わるわけではない。拒絶証書作成又はその作成期間経過という次の節目が重要である。

[CM-511] 期限後裏書の指名債権譲渡効
支払拒絶証書作成後又はその作成期間経過後の裏書は民法上の債権譲渡の効力だけを有する。流通保護の必要が弱まるため、通常の裏書による抗弁切断等は生じない。満期後裏書と期限後裏書を区別する。

[CM-512] 無日付裏書の時期推定
日付の記載がない裏書は支払拒絶証書作成期間の経過前にされたものと推定される。取得者は毎回裏書時期を外部証拠で証明する負担を負わない。相手方は反証により期限後裏書であることを争い得る。

[CM-513] 手形保証人の責任内容
手形保証人は被保証人と同一内容の手形債務を負う。保証の対象となる人の責任の位置に応じて、主債務者への保証か裏書人への保証かを区別する。

[CM-514] 確定日払等の支払呈示期間
確定日払・日付後定期払・一覧後定期払手形は支払日又はこれに次ぐ2取引日内に支払呈示する。暦日ではなく取引日で数える。支払呈示の期間と、拒絶証書作成・拒絶通知の期間を別々に確認する。

[CM-515] 一部支払の受領義務
手形所持人は一部支払を拒むことができない。一部でも支払を受ければ遡求義務者の負担が減るため、全額でなければ受け取らないとはいえない。残額については遡求を検討する。

[CM-516] 満期不払による遡求
満期に支払がないとき、所持人は裏書人・振出人その他の手形債務者へ遡求できる。遡求権を保全する呈示・拒絶証書等の条件を同時に確認する。『不払だった』という事実だけで手続的条件が消えるわけではない。

[CM-517] 引受拒絶による満期前遡求
引受けの全部又は一部が拒絶されたとき、所持人は満期前でも遡求できる。為替手形の支払人が主債務を引き受けないことが明確になれば、満期まで待たせる実益がない。拒絶の証明等が必要となる。

[CM-518] 支払人の破産による満期前遡求
支払人について破産手続開始決定があるとき、所持人は満期前でも遡求できる。支払不能が公的に明らかになったので満期前の救済を認める。破産決定の提示による遡求など証明方法の特則がある。

[CM-519] 拒絶証書による支払拒絶の証明
遡求権保全のため、引受拒絶又は支払拒絶は原則として適時の拒絶証書で証明しなければならない。不払や引受拒絶を公的に確認して、遠くの手形関係者にも検証可能にする。無費用償還文句等の免除の有無を先に確認する。

[CM-520] 支払拒絶証書の作成期間
確定日払等の手形の支払拒絶証書は支払日又はこれに次ぐ2取引日内に作成させる。支払呈示と拒絶証書の期間を混同せず、条文上の期間内に公証手続等を行う。期間徒過は遡求権保全に影響する。

[CM-521] 支払拒絶等の通知
所持人は拒絶証書作成日の翌日から4取引日内に自己の裏書人及び振出人へ拒絶を通知しなければならない。通知は遡求義務者が次の請求に備えるための連絡である。拒絶証書の作成を免除されているときは呈示日が起算の基礎となる。

[CM-522] 拒絶通知懈怠と遡求権
拒絶通知を怠っても遡求権は失われない。通知は拒絶証書等と違って遡求権そのものの存続条件ではない。ただし怠ったことで生じた損害の賠償責任は残る。

[CM-523] 無費用償還文句
振出人・裏書人又は保証人は、手形上の文言と署名により遡求のための拒絶証書作成を免除できる。免除は拒絶証書を作る負担に関する。振出人が付した場合と一裏書人が付した場合では及ぶ範囲が異なる。

[CM-524] 無費用償還文句と呈示・通知
無費用償還文句があっても法定期間内の支払呈示及び拒絶通知は免除されない。証明書作成を省けても、現実に支払を求め、関係者へ不払を知らせる必要は残る。『無費用』を手続すべて不要と読むのは誤りである。

[CM-525] 手形債務者の合同責任
振出人・引受人・裏書人・保証人は所持人に合同して責任を負う。所持人は複数の責任者へ請求できるが、二重に弁済を得られるわけではない。誰かの支払後は内部的な再遡求へ移る。

[CM-526] 所持人の遡求金額―手形金額
所持人は不払手形金額を遡求義務者へ請求できる。一部支払があればその残額が出発点となる。利息や費用の追加は別の法定項目で判断する。

[CM-527] 保全期間徒過による遡求権喪失
法定の呈示期間又は拒絶証書作成期間等を徒過した所持人は、引受人等の主債務者を除く者への遡求権を失う。主債務者への請求と、補充的な遡求義務者への請求を分けて保護する。呈示を忘れたことを全債務消滅と同一視しない。

[CM-528] 裏書人間の再遡求権の時効
裏書人の他の裏書人及び振出人に対する請求権は、支払日又は自己が訴えられた日から6か月で時効消滅する。自分が支払ってから先の義務者に回収する段階の時効である。所持人の遡求権の1年とは起算点も期間も違う。

[CM-529] 特定線引小切手の支払先
特定線引小切手の支払人は指定銀行に限り支払うことができる。指定された銀行が支払人自身である場合は、その取引先へ支払える特則がある。線引小切手は現金化の経路を制限する制度である。

[CM-534] 融通手形の害意取得者
第三取得者が人的抗弁の存在を知り、手形債務者を害することを認識して取得した場合、振出人は融通の人的抗弁を対抗できる。融通手形だという知識と、債務者を害して抗弁を封じる取得であるという認識を区別する。後者は人的抗弁切断の例外となる。

[CM-535] 手形保証債務の独立性
手形保証債務は、被保証債務に方式の欠缺がある場合を除き、被保証債務が他の理由で無効でも有効である。民法の保証の付従性より独立性が強い。無能力等による無効と、証券に必要な方式自体が欠ける場合を分ける。

[CM-536] 支払人の支払停止による満期前遡求
支払人が支払を停止したときは、破産手続開始決定がなくても所持人は満期前に遡求できる。破産申立てや開始決定を待たなくても、一般的な支払停止があれば満期前遡求の場面となり得る。

[CM-537] 支払人への強制執行不奏功による満期前遡求
支払人に対する強制執行が奏功しなかったとき、所持人は満期前に遡求できる。執行しても回収できなかったという外形的事実によって、満期まで待つことの危険が裏付けられる。

[CM-538] 拒絶通知懈怠の損害賠償
拒絶通知を怠った者は、その過失による損害を手形金額の限度で賠償する。手形金額を上限に、通知しなかった過失と損害の因果関係をみる。通知懈怠により当然に手形金全額を賠償するわけではない。

[CM-539] 遡求請求の順序自由
所持人は振出人・裏書人・保証人に対し、義務を負った順序にかかわらず請求できる。まず直前の裏書人へ請求し、次にその前へと順番に請求する必要はない。所持人は回収可能性のある責任者を選べる。

[CM-540] 所持人の遡求金額―利息
所持人は満期から年6分の利率による利息を遡求義務者へ請求できる。手形法固有の遡求利息であり、一般民法の法定利率をそのまま代入しない。約定利息が適法に記載される場面とは別である。

[CM-541] 所持人の遡求金額―費用
所持人は拒絶証書・通知その他の費用を遡求義務者へ請求できる。不払を確認し通知するために必要となった法定の費用も回収対象となる。原因取引で生じた損害すべてを手形上の費用とするわけではない。

4-13. 既存学習の記録がある項目の補遺

以下には既存の教授・回答の証拠がある。未学習として数え直す項目ではなく、同じ本文で必要事項を確認できるよう再掲する。
参照:B-COMP, B-COMMERCE

[CM-263] 剰余金配当の決定事項
剰余金配当では配当財産の種類・総額、割当て、効力発生日等を原則株主総会決議で定める。原則は株主総会の普通決議である。定款授権の要件を満たす会計監査人設置会社等では取締役会決議による特則があり、配当の決定権限と分配可能額規制は別に満たす必要がある。

[CM-361] 種類株式―譲渡制限
株式会社は譲渡取得に会社承認を要するかについて内容の異なる種類株式を発行できる。一種類でも譲渡制限のない株式があれば会社法上の公開会社に当たり得る。上場の有無とは別の概念である。

[EXT-CM-017] 一方的商行為と双方への商法適用
当事者の一方にとって商行為となる行為には、原則として双方に商法を適用する(商法3条1項)。ただし『商人間』『双方のために商行為』と限定した規定はその要件を別に満たす必要があり、消費者契約法などの保護規定も失われない。

参照法令・資料

[B-COMMERCE] 商法(3、19、20、529以下、595〜598条等)
https://laws.e-gov.go.jp/law/132AC0000000048
確認範囲:商業帳簿、交互計算、寄託、場屋営業、一方的商行為

[B-COMP] 会社法(特に108、125、179〜179の10、361、381、396、430の2・3、432〜446、461〜465、467、471〜515、575〜613、847の3条)
https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086
確認範囲:会社法本文の根拠条文

[B-BILL] 手形法(1〜2、7〜20、30〜32、38〜53、70、75〜79、85条等)
https://laws.e-gov.go.jp/law/307AC0000000020
確認範囲:為替手形・約束手形の方式、裏書、抗弁、遡求、時効

[B-CHECK] 小切手法(1〜5、28〜39、40〜52条等)
https://laws.e-gov.go.jp/law/308AC0000000057
確認範囲:小切手の方式、呈示、線引、遡求

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@西園寺貴文(憧れはゴルゴ13)#+6σの男

   




"make you feel, make you think."

 

SGT&BD
(Saionji General Trading & Business Development)

新たなるハイクラスエリート層はここから生まれる
         




Lose Yourself , Change Yourself.
(変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気を我らに与えたまえ。変えることのできないものについては、それを受け入れられる冷静さを与えたまえ。そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを、見分ける知恵を与えたまえ。)
 
説明しよう!西園寺貴文とは、常識と大衆に反逆する「社会不適合者」である!平日の昼間っからスタバでゴロゴロするかと思えば、そのまま軽いノリでソー◯をお風呂代わりに利用。挙句の果てには気分で空港に向かい、当日券でそのままどこかへ飛んでしまうという自由を履き違えたピーターパンである!「働かざること山の如し」。彼がただのニートと違う点はたった1つだけ!そう。それは「圧倒的な書く力」である。ペンは剣よりも強し。ペンを握った男の「逆転」ヒップホッパー的反逆人生。そして「ここ」は、そんな西園寺貴文の生き方を後続の者たちへと伝承する、極めてアンダーグラウンドな世界である。 U-18、厳禁。低脳、厳禁。情弱、厳禁。