「どちらか、迷いどころですよね」 「んー、もう３つ全部ください」   「お財布、３つ、全てですか？」 「ええ。あとあのバッグとあのバッグと・・・」       祗園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。 娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理を表す。   おごれる人も久しからず、 唯春の夜の夢のごとし。   たけき者も遂には滅びぬ。 ひとえに風の前の塵に同じ。         夢。 昔から嫌いな言葉。   夢なんか呪いで、夢なんか持ってるほど、現実に落胆させられる。 半グレやヤンキーは砕けた夢から生まれる。   きっと、社会に一矢報いてやりたいとか思って、世間を騒がせる事件を起こす奴は夢を持っていた奴か夢破れた奴で。 夢なんか見て自分の輪郭を見失うのはもう懲り懲りで。