大企業を辞めたい40代へ―社員食堂の430円カレーが、なぜあなたを会社に残すのか

昼12時11分。

社員証をピッとかざす。

トレーにカレーを載せる。

430円。

東京のオフィス街で、430円です。

味噌汁まで付いている。

窓の外には、昼飯に1500円くらい払いそうな人たちが歩いている。

大企業に20年いると、こういう小さな異常が日常になります。

会社の食堂。

団体保険。

企業型DC。

持株会。

住宅関連の制度。

健康診断。

人間ドック補助。

出張精算。

社内システム。

有給休暇。

名前を言えば相手が知っている会社名。

そして毎月、決まった日に給与が入る。

一個ずつ見ると大したことがない。

でも40代になって、

「もうこの会社辞めようかな」

と思った瞬間、全部が急にこちらを見る。

430円のカレーまで、少し重い。

大企業を辞めたい40代が怖いのは、転職そのものだけではない

大企業を辞めたい。

40代。

管理職。

年収800万円、1000万円、1200万円。

仕事にはもう飽きている。

社内政治もしんどい。

昔ほど出世にも興味がない。

でも転職サイトを見ると、

年収700万円。

800万円。

「経験により応相談」。

なんだか急に数字が曖昧になります。

大企業にいる間、自分の給与は毎月かなり明確です。

ところが会社の外へ一歩出ると、

自分はいくらなのか

が分からない。

これは結構怖い。

家を売るときならSUUMOで周辺相場を見られます。

中古車ならカーセンサー。

株なら市場価格が一秒ごとに出る。

でも40代会社員の自分には、板情報がありません。

社内では「部長」なのに、社外へ出ると急に商品説明が長くなる

例えば、

「○○株式会社、営業企画部長」

なら一行で済みます。

相手もだいたい分かる。

ところが会社名を消してみる。

私は、

法人営業を経験し、

事業企画をやり、

10人ほどのマネジメント経験があり、

予算管理もして、

新規事業にも少し関わり、

SAPも多少分かり、

Salesforceも使えて、

取引先との折衝もできます。

急に説明が長い。

そして説明が長くなるものは、だいたい売りにくい。

会社の中では自分の価値を説明する必要がなかった。

人事等級。

役職。

過去の異動歴。

評価。

社内ネットワーク。

全部会社が知っている。

20年かけて巨大な顧客データベースができています。

顧客は会社一社です。

かなり太い顧客です。

問題は、その顧客から離れようとしていることです。

給料には「社内価格」が混ざっている

労働経済学には、internal labor market、内部労働市場という考え方があります。

企業が必要な人材を毎回外部市場から買うのではなく、社内で採用、育成、異動、昇進させていく仕組みです。

特に日本の大企業では、新卒採用から長期的に育成し、部門横断の異動などを通じてfirm-specific human capital、企業特殊的人的資本を蓄積する傾向が強いことが、近年の日本企業を扱った研究でも指摘されています。一般的な技能は他社でも使いやすい一方、その会社固有の知識や人間関係、手続きへの習熟は、会社を移ると価値が落ちやすい。

例えば、

「あの案件は法務の佐藤さんを最初に通した方が早い」

という知識。

SAPの正式マニュアルには載っていません。

「役員会に出す資料は、数字よりこの順番で説明した方が通る」

もUdemyにはない。

20年いると、こういうものが身体に入っています。

仕事が速い。

評価される。

給料も上がる。

ところが転職した瞬間、

法務の佐藤さんはいません。

40代になると、自分の能力と「会社への適応」が混ざってくる

これがかなり厄介です。

自分は仕事ができる。

本当にそうかもしれない。

でもその「できる」の中に、

一般人的資本

業界特殊的人的資本

企業特殊的人的資本

が混ざっています。

業界知識は持っていける。

Excelも持っていける。

交渉能力も持っていける。

でも、

社内で誰に電話すれば話が進むか

は置いていく。

実際、転職による賃金への影響は、単なる「勤続年数」だけではなく、以前の業界で蓄積したindustry-specific human capitalが新しい仕事でも使えるかによって変わることが古くから示されています。

だから40代で会社を辞めるときに、

「市場価値を棚卸ししましょう」

と言われる。

言葉は軽い。

やっていることは、20年間絡まった配線から、

持っていけるケーブル

と、

会社の壁に埋め込まれているケーブル

を一本ずつ分ける作業です。

かなり面倒です。

それでも会社にいると、自分の値段を知らなくて済む

毎年、給与が入る。

人事評価がある。

多少不満でも大きくは変わらない。

つまり会社が、

「あなたは今年だいたいこの値段です」

と決めてくれる。

市場へ毎年出品しなくていい。

これはものすごく楽です。

フリーランスなら毎回売る。

経営者なら客が買うかどうかで値段が出る。

営業なら数字が出る。

でも大企業の間接部門なら、自分の仕事の市場価格がよく分からないまま20年経つこともある。

それでも給与は振り込まれる。

ある意味、大企業は人間を価格変動から守っています。

「会社に守られている」と言われると腹が立つ人がいる

分かります。

こっちは毎日働いている。

残業もする。

責任もある。

別に会社から生活保護を受けているわけではない。

その通りです。

ただ、「守る」というのは、

能力がない人間を飼う

という意味ではありません。

市場の揺れを直接受けなくて済む

という意味です。

会社の中では、今日一日で自分の給与が20%暴落することは普通ありません。

転職市場の需要が弱くなっても、翌月の給与が自動的に15万円減るわけでもない。

取引先を一社失っても、社員全員の給料を翌朝マーケット価格に再計算するわけではない。

企業という巨大な箱が、一度ショックを受け止める。

これはかなり大きい。

壁は、外へ出る邪魔をするためだけにあるわけではない

大企業に長くいると、

社内制度が面倒。

承認が遅い。

ルールが多い。

意思決定が遅い。

と思います。

壁ばかりです。

ところが、壁というものを全部壊せば快適になるのかというと、そうでもありません。

人体にも、壊れたらかなり困る壁があります。

血液脳関門。

blood-brain barrier、BBBです。

脳は、かなり厳重に囲われている

脳の毛細血管では、内皮細胞どうしがtight junctionと呼ばれる強い結合を作り、血液中の物質が脳へ自由に入り込まないようにしています。

毒性物質や病原体などから中枢神経系を守り、脳内環境を安定させる。

かなり重要な防御機構です。

ところが医薬品を作る人から見ると、これが猛烈に邪魔です。

薬まで入らない。

Nature系のレビューでも、BBBが中枢神経系を保護する一方、多くの治療薬の脳内移行を妨げることが、CNS創薬の大きな難題として整理されています。

守っている壁と、

邪魔している壁が、

同じ壁です。

これは面白い。

大企業の「嫌なところ」が、自分を守っていた可能性がある

年功的な制度。

内部昇進。

企業固有の業務。

社内ネットワーク。

ブランド。

福利厚生。

長期雇用。

これらは外へ出ようとするとfrictionになります。

でも同じfrictionが、外部市場からの競争を弱めるshieldにもなっている。

例えば外部から猛烈に優秀な人が来ても、

社内事情を知らない。

人脈がない。

社内システムに慣れていない。

意思決定ルートを知らない。

だから、あなたが今日まで積み上げたものには価値がある。

会社への適応が、外へ出ると価値を失う。

でも中にいる限り、それが競争優位になる。

これはかなり皮肉です。

辞めたい理由の一部が、

辞めにくい理由そのもの

になっています。

だから「辞めたいのに辞められない」は、意思が弱いとは限らない

40代で大企業を辞めたい。

でも辞めない。

周囲からは、

勇気がない。

安定を捨てられない。

ぬるま湯。

と言われることがあります。

少し違うかもしれません。

身体のどこかで、

この壁の外へ出ると、自分の値段がもう一度付け直される

と分かっている。

それが怖い。

会社が嫌いなのに、会社を失うことも怖い。

矛盾しています。

でも合理的です。

嫌いな壁が、雨風も防いでいる。

人間はそういう場所から簡単には出られません。

問題は「辞めるか残るか」ではなく、自分の何%が壁の外でも生きるか

この問いに変えると、かなり実務的になります。

転職サイトを眺めるだけでは足りません。

外部の採用面接を受けてみる。

転職エージェントに職務経歴書を見せる。

業界外の人と仕事をする。

副業をする。

自分の知識を有料で売る。

会社名を隠して人に会う。

資格ではなく成果物を作る。

社内固有語を使わず、自分の仕事を説明する。

これは全部、

外部市場でのprice discovery

です。

株なら毎日やっています。

人間だけ、20年間やらずに突然退職日に初値を付けようとする。

そりゃ怖い。

「転職しない」という選択にもoption valueがある

もう一つ厄介なのは、時間です。

今辞める。

一年待つ。

三年待つ。

これは同じではありません。

動学的に見ると、待つことで得られる情報があります。

景気。

会社の再編。

早期退職。

次のポスト。

家族状況。

転職市場。

自分の資産。

だから「今は残る」にはoption valueがあります。

一方で待つほど、

年齢は上がる。

企業特殊的人的資本は増える。

社内報酬も増える。

生活も会社へ最適化される。

つまり、

待つ価値

と、

待つことで増えるswitching cost

が同時に動く。

40代の退職が難しいのは、気合いの問題ではありません。

時間を含んだ意思決定だからです。

会社の中で価値を上げるほど、会社の外へ出やすくなるとは限らない

これが、たぶん一番嫌な話です。

社内評価が上がった。

役職が上がった。

社内人脈が増えた。

給与が上がった。

普通なら、

自分の価値が上がった

と思います。

でも、その増加分のどれだけが外へ持っていけるでしょう。

内部労働市場では、企業固有の人的資本が社員を組織へ深く埋め込み、離職コストを高めうることが研究されています。一方で、企業特殊性の認識が必ずしも単純に移動を減らすわけではないという研究もあり、実際の効果は仕事やチーム構造によって異なります。

だから「市場価値」という一語で全部まとめるのは危ない。

社内価値。

業界価値。

市場価値。

別々にある。

そして40代になると、その三つの差がかなり開いている人がいる。

大企業を辞めたい40代が、最初に壊すべきものは会社ではない

会社を辞める。

それも一つです。

でも先に壊した方がいいものがあります。

「自分の値段は、今の給与である」

という認識です。

年収1200万円だから、市場でも1200万円。

とは限らない。

逆もあります。

社内で800万円でも、外では1500万円になる人もいる。

会社が付けている価格は、その会社という特殊な市場での価格です。

まず外で値段を付けてみる。

売らなくてもいい。

TOBではありません。

値札を見るだけでもいい。

430円のカレーに戻る

社員食堂。

カレー430円。

会社を辞めれば、もう食べないかもしれません。

でも本当に失うものは430円のカレーではない。

その後ろにある巨大な仕組みです。

会社の信用。

内部労働市場。

企業特殊的人的資本。

福利厚生。

肩書。

人間関係。

価格変動から自分を隔離していた壁。

大企業を辞めたいと思ったとき、我々はその壁を「牢屋」のように見ます。

でも血液脳関門も壁です。

壁は中のものを閉じ込める。

同時に、外のものから守る。

だから難しい。

辞めるべきか。

残るべきか。

その前に一つだけ測った方がいい。

壁がなくなったあとにも、自分の何が残るのか。

もしそれが十分にあるなら、外へ出ることはそれほど怖くない。

少ないなら、今すぐ辞める必要もない。

壁の中にいる間に、壁の外でも値段が付くものを増やせばいい。

社員証をピッとかざす。

430円。

まだ安い。

なら、その差額を少しだけ利用すればいい。

会社に守られている時間を使って、

会社に守られなくても生きられる自分を作る。

大企業を辞める準備というのは、会社から逃げることではないのかもしれません。

会社という血液脳関門の向こう側でも、自分がちゃんと届くようにしておくことです。

そして、ある日社員証を返したとき。

首からカードが一枚消える。

たぶん想像していたより、少し軽い。

問題は、その軽さを自由と呼べるだけのものを、会社の外側に先に作っておけたかどうかです。


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西園寺貴文(憧れはゴルゴ13)#+6σの男

   




"make you feel, make you think."

 

SGT&BD
(Saionji General Trading & Business Development)

新たなるハイクラスエリート層はここから生まれる
         




Lose Yourself , Change Yourself.
(変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気を我らに与えたまえ。変えることのできないものについては、それを受け入れられる冷静さを与えたまえ。そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを、見分ける知恵を与えたまえ。)
 
説明しよう!西園寺貴文とは、常識と大衆に反逆する「社会不適合者」である!平日の昼間っからスタバでゴロゴロするかと思えば、そのまま軽いノリでソー◯をお風呂代わりに利用。挙句の果てには気分で空港に向かい、当日券でそのままどこかへ飛んでしまうという自由を履き違えたピーターパンである!「働かざること山の如し」。彼がただのニートと違う点はたった1つだけ!そう。それは「圧倒的な書く力」である。ペンは剣よりも強し。ペンを握った男の「逆転」ヒップホッパー的反逆人生。そして「ここ」は、そんな西園寺貴文の生き方を後続の者たちへと伝承する、極めてアンダーグラウンドな世界である。 U-18、厳禁。低脳、厳禁。情弱、厳禁。