2026年9月9日までに確認できた公表資料・報道に基づく。相場水準は記事中に記載した報道時点。
ベッセント米財務長官が円高を促している、という見方には明確な根拠がある。米国は日本と協調して実際に円を買い、日銀の金融政策にも円安是正を求める姿勢を示している。ドル円を考えるうえで、「米国は円安を傍観する」という前提を、いまも置き続けることは難しい。
ただし、この変化を「米国が円高を望んだから、これから円は上がり続ける」と読むと、相場を見誤る。政策当局が円売りを難しくすることと、民間のお金が継続的に円へ向かうことには距離がある。その距離を埋めるのが、日米の金利見通し、日本の財政への信頼、そして国境を越える資金の動きだ。
私の見立てを先に述べると、当面は円高方向への圧力が優勢だと考える。ただし、持続的な円高への移行を判断するには、日米の政策決定と、その後の金利経路を確認する必要がある。 すでに進んだ円高を追いかける局面と、これから円高の根拠が強くなる局面は分けて考えたい。
9月9日のロイター報道では、ドル円は1ドル153.40円付近。円は月初から約4%上昇していた。日銀の追加利上げ期待と米国の円支持姿勢は、すでに相場に影響している。「円高材料を見つけた」だけでは、その材料が今からどれほど追加の円高を生むかは分からない。ロイター・9月9日の為替市場
まず押さえるべきは、米国がすでに行動していることだ。 日本の財務省は8月3日の声明で、7月31日、米東部時間に米財務省と協調して円買いを実施したと明らかにした。さらに、追加の協調介入もためらわないとしている。今回の円高圧力には、実際の取引と、再び実行する意思の表明という裏付けがある。日本財務省・8月3日声明
8月30日の植田日銀総裁との会談について、米財務省の公式発表はさらに踏み込んでいる。ベッセントは円が大幅に過小評価されているとの認識を示し、それに対処する日本の市場・金融政策上の断固とした措置を強く支持した。円安が日本のインフレ圧力になっているとも指摘している。介入に加え、金融政策によって円安を生む条件を変えるよう求めている、と読む根拠になる。米財務省・植田総裁との会談概要
そして9月8日、米国のサザンメソジスト大学で、ベッセントは円売りを仕掛ける市場参加者を牽制した。「I am the house now」。自分はいま、賭けの胴元にあたる側にいる、という強烈な言い方だ。日本の政策に関する情報上の優位も示唆した。フィナンシャル・タイムズ・発言の報道
この言葉が示すのは、市場との向き合い方の変化である。円を売る投資家は、金利差でどれだけ稼げるかに加え、当局がいつ動き、どこまで政策を変えさせようとするかも考えなければならなくなる。もっとも、本人の情報上の優位を強調する発言から、日銀の利上げが確約されたとまでは言えない。
ベッセントの働きかけは、円売りで稼ぐための条件を厳しくする。 円キャリー取引は、低い金利の円で資金を調達し、より高い利回りを期待できる海外資産などに投じる取引だ。円相場が安定していれば金利差が収益源になり、さらに円安が進めば為替面でも追い風になる。一方、円高が急速に進むと、金利差で積み上げる利益を短期間の為替損失が上回りうる。
ここで当局の行動が効いてくる。実際に円買いが入るうえ、再介入や日銀の利上げへの警戒から円相場の変動も大きくなるなら、同じ金利差を取るために負うリスクが増える。投資家は取引を減らしたり、円を買い戻したりする。その買い戻しが円高を進め、別の投資家の損失を膨らませ、さらに買い戻しを促すこともある。
つまり、政策の影響は介入額だけでは測れない。当局が動く可能性を意識して、民間がどれだけ先に動くかも効く。ただし、売っていた円を買い戻す動きには限りがある。それが一巡した後も円を買う理由が残るかどうかで、円高の持続力が決まる。
では、なぜ米国がそこまで円を支えるのか。 ベッセント本人が説明している理由には、円の過小評価と、円安がほかの通貨の競争的な切り下げにつながることへの懸念がある。日本への支援も、米国経済や納税者の利益に沿うものとして説明している。円安によって貿易相手国間の価格競争が通貨安競争へ広がるなら、米国にとっても放置しにくい問題になる。ロイター・8月4日の本人説明
今回、米国側が行ったと説明されているのは、ユーロを売って円を買う取引だ。この点も押さえたい。円の上昇を促す意図は明確だが、この取引だけをもって、米国があらゆる通貨に対してドルを切り下げる政策へ全面転換した、と広げて読むことはできない。円を支える個別の行動と、ドル全体への政策方針は区別する必要がある。ロイター・取引の説明
もう一つ、米国側の利害を理解するために欠かせないのが米国債市場だ。日本が円を買い支えるドルを調達するため、保有する米国債を大量に売れば、米国債の価格や利回りに圧力がかかりうる。日本の為替防衛が、米国の資金調達環境を悪化させる経路である。ピーターソン国際経済研究所も、協調介入を考えるうえでこの利害を指摘している。PIIE・協調介入の政策分析
ここで出てくるのが、FRBの「FIMAレポ・ファシリティ」だ。対象となる外国当局が、米国債を一時的に差し入れてドルを調達できる仕組みである。ドルが必要だからといって、米国債を市場で売却せずに済む経路を用意する。日本の財務省は8月3日の声明で、今後この制度を利用する計画を示した。声明で確認できるのは将来の利用計画であり、その時点で実際に利用したという発表ではない。FRB・制度の説明、日本財務省・声明
この仕組みからは、円を支えながら、米国債の売却圧力も抑えたいという政策上の利害が読み取れる。ただし、「米国債を守ることだけがベッセントの本当の目的だ」と断定すれば、本人の説明と分析者の推論を混ぜることになる。また、一時的なドル調達の仕組みは、日本に無制限の介入資金が贈られることを意味しない。時間を確保する手段と、円安の原因を解消する政策は、それぞれ役割が違う。
この政策には、さらに難しいねじれがある。 円を支えるために日本の金利が上がり、日本国債への投資が魅力的になれば、日本の民間投資家が海外への新規投資を減らしたり、海外資産を売って国内へ資金を戻したりする可能性も出てくる。国内利回りの上昇が日本の資金を国内にとどめる誘因になるとの見方は、9月9日のフィッチに関する報道でも示されている。ロイター・日本の金利と資金配分
日本当局による緊急の米国債売却を避けられても、民間投資家による米国債の購入減少や売却まで止められるわけではない。前者は介入資金の調達方法の問題で、後者は運用先の魅力を比較する問題だからだ。FIMAで対処できる範囲と、日本の利上げが世界の資金配分を変える範囲には境界がある。
この構造から考えると、米国の利益にかなう円高には速度と条件がある。円安の混乱を抑え、物価と市場を安定させる円高は歓迎できても、急激な資金還流やキャリー取引の解消を通じて世界の資産売却を連鎖させる円高は別問題になる。これは政策上の利害から導ける見方であり、米国が特定の為替水準を保証しているという意味ではない。
今後のドル円で、最も危険なのは日米の金利を古い筋書きで見ることだ。 「米国はいずれ利下げ、日本は利上げ、だから円高」という説明だけでは、足元の状況を捉えきれない。確認できる政策金利は、日銀が1.0%程度、FRBが3.50~3.75%。依然として米国のほうが高く、日銀の追加利上げが実施されても、一度の小幅な変更だけでその差はなくならない。日銀・7月31日の決定、FRB・7月29日の決定
しかも、米国では利上げも選択肢に残っている。ウォラーFRB理事は9月3日、インフレの改善が続けば据え置きを支持する一方、8月のデータで改善が一時的だったと分かれば、9月の会合で利上げが適切になる可能性を示した。米国の金利が自動的に下がっていくという前提は置けない。FRB・ウォラー理事の9月3日講演
為替に効くのは、現在の金利差に加えて、これから金利差がどのように変わると市場が見ているかだ。日銀が利上げしても、市場が想定していた通りで、その後の追加利上げに慎重な姿勢を示せば、円高が止まることはある。反対に、次の一回の変更幅が小さくても、その後も引き締めが続くとの見方が強まれば、円を支える力は大きくなりうる。
同じことが米国側にも当てはまる。利上げそのものより、インフレを抑えるために高金利をどれほど長く続けるのかが重要になる。「日銀が上げたか」だけを見ると、ドル円という二つの通貨の価格を、片側の事情だけで判断してしまう。
原油も、この見通しを左右する。9月9日にはブレント原油が1バレル100ドルを超えたと報じられた。日本にとって原油高は輸入負担を増やし、米国ではインフレの沈静化を難しくする可能性がある。輸入面からの円の重荷と、米金利を高く保つ圧力が重なれば、円高誘導に対抗する力になりうる。ロイター・9月9日の市場報道
また、「日本の金利が上がれば円高」という理解にも条件がある。成長や賃金の改善を伴う金融正常化によって金利が上がる場合と、財政への不安から投資家が高い利回りを要求する場合では意味が違う。後者では、国債金利の上昇と円安が同時に起きても不思議ではない。利上げが物価を抑える一方、借り換えに伴って政府の利払い負担も増やしていくという日本の政策上の難しさは、PIIEも指摘している。PIIE・日本の金融・財政政策の制約
では、これから何を見れば、円高が続くのか判断できるのか。 直近の焦点は、9月15~16日のFOMCと、17~18日の日銀金融政策決定会合になる。見るべきは変更幅に加え、その決定を通じて、市場が予想する次の半年、一年の金利経路が変わるかどうかだ。FRB・会合日程、日銀・会合日程
政策の組み合わせによる違いを整理すると、次のようになる。以下は予測の分岐条件であり、各シナリオの実現を断定するものではない。
| これから確認される変化 | ドル円への含意 |
|---|---|
| 日銀の継続的な利上げが想定以上に意識され、米国のインフレが落ち着く | 金利差縮小の見通しが円高を支え、政策の牽制に経済的な裏付けが加わる |
| 日米ともに利上げする、または双方の高金利継続観測が強まる | 次の一回の変更だけでは方向が定まらず、その後の経路と事前予想との差が重要になる |
| 日銀が期待より慎重で、原油高などから米国の引き締め観測が強まる | 円高期待が後退し、ドル円が反発しやすくなる。米国の円支持姿勢との綱引きになる |
| 円売りの買い戻しと、海外資産の売却が急速に連鎖する | 急な円高と株安が重なる可能性がある。ただし、買い戻し一巡後の持続力は別途確認が必要になる |
私が当面の円高圧力を重く見るのは、実際の協調介入、米国による金融政策への働きかけ、円売りポジションを維持するリスクの増大が重なっているからだ。一方で、米国のインフレや日本の政策がその方向に沿わなければ、この見立ては修正する必要がある。ベッセントの強い言葉だけを根拠に、円高予想を維持し続けることはできない。
中期的に一段の円高を考えるなら、必要なのは介入が続くかどうかだけではない。海外へ向かっていた新規資金の一部が国内に残り、円建て資産を保有する魅力が改善することも重要になる。海外で得た収益が海外で再投資されるなら、それだけでは円買いにならない。資金が円へ戻る取引まで伴って、初めて為替の需給が変わる。
そして、仮に日本の投資家が米国債を減らすとしても、その影響は単純ではない。円を買う動きは円高要因になる一方、米国債売りが米金利を押し上げれば、ドルの利回り面の魅力を高める方向にも働く。どのお金が、どの資産から、どの速度で動くかによって結果は変わる。「資金還流だから円高」と一行で済ませると、その途中で起きる価格調整を見落とす。
日本の投資家にとって、この変化は保有資産の円換算額にも直結する。 為替をヘッジしない海外資産では、現地通貨での資産価格と、その通貨を円に換えるレートの両方が成績を左右する。単純な計算例として、資産価格が10%上がっても、その外貨の円換算レートが10%下がれば、円換算では約1%のマイナスになる。これは将来予測ではなく、二つの値動きが掛け合わされるという話だ。
NISAで保有していても、この計算は変わらない。NISAは運用益に対する非課税制度であり、為替が評価額を動かす仕組みは別だからだ。金融庁・NISAの説明 円安で増えた評価額まで、すべて投資先企業の成長力による成果だと受け取っていたなら、円高局面でその見方は問われる。ただし、円高だけで海外企業の事業価値が失われるわけでもない。為替の逆風と、投資先そのものの評価は分けて考える必要がある。
今回の変化で最も重いのは、米国が円安是正の当事者になったことだ。円売りを続ける投資家は、金利差だけでなく、米財務省が再び行動する可能性と、日本の金融政策が変わる可能性を引き受けることになる。
ベッセントは、円を売り続けることの危険を市場に意識させた。次に問われるのは、円を保有し続けるだけの魅力を、日本の政策と経済が生み出せるかだ。当局を恐れて円を買い戻す相場から、円を持つ理由があるから買う相場へ進めるか。そこが、今回の円高の持続力を見極める分かれ目になる。
===
![]() |
![]() ![]() ![]() ![]() |
![]() ![]() ![]() ![]() |
"make you feel, make you think."
SGT&BD
(Saionji General Trading & Business Development)
説明しよう!西園寺貴文とは、常識と大衆に反逆する「社会不適合者」である!平日の昼間っからスタバでゴロゴロするかと思えば、そのまま軽いノリでソー◯をお風呂代わりに利用。挙句の果てには気分で空港に向かい、当日券でそのままどこかへ飛んでしまうという自由を履き違えたピーターパンである!「働かざること山の如し」。彼がただのニートと違う点はたった1つだけ!そう。それは「圧倒的な書く力」である。ペンは剣よりも強し。ペンを握った男の「逆転」ヒップホッパー的反逆人生。そして「ここ」は、そんな西園寺貴文の生き方を後続の者たちへと伝承する、極めてアンダーグラウンドな世界である。 U-18、厳禁。低脳、厳禁。情弱、厳禁。



