第2話 : 焦燥
とにかく焦った。 早く駆け上がらなければ。 高く駆け上がらなければ。 今思えば、何も無いかったからこそ、焦燥に押しつぶされそうになっていたのかもしれない。 己の願望からのみ派生したターゲット。 こればかり見ていた。 いや、というより、外の世界を見ていて、欲望を植え付けられたのだ。 自分は遅れてる。 劣ってる。 もっと高い世界がある。 劣等感と同時に、ビリビリと欲望を刺激する刺激物が目の前を過ぎていく。 露出の激しい美女。 高級なお店。 ゴージャスなホテル。 そこに焦点を当てることしかできなかったのかもしれないけれど、とにかく焦った。 いや、どっちなんだろう。 都会の夜景に刺激されて、欲望が暴走したのか。 それとも、都会の夜景に刺激されて、自分の相対的な小ささを直観的に感じ取り、焦ったのか。 & (さらに…)