黒字事業を売却する経営者は何を考えているのか――「良い事業」と「持つべき事業」は同じではない

黒字事業を売却する経営者は何を考えているのか――「良い事業」と「持つべき事業」は同じではない

会社が赤字事業を売却する。

これはわかりやすい。

儲からないから売る。

ところが、実際の企業経営では、

利益が出ている事業を売却する

ことがあります。

しかも、その事業単体で見れば、

  • 黒字
  • 成長中
  • ブランドもある
  • 顧客もいる
  • キャッシュも出ている

という、一見すると「手放す理由がない」事業だったりする。

会社員の感覚では、

「せっかく儲かっているのに、なぜ売るんだ」

となります。

しかし経営者、とりわけ資本配分を重視するCEOやCFO、PEファンドなどは、少し違う問いを立てています。

「この事業は良い事業か」ではない。

「この会社が、この事業を所有し続けることが最も合理的か」

です。

この二つは似ていますが、全く違います。

「儲かっているから持つ」は、資本配分としては不十分

たとえば、ある会社にA事業があります。

年間営業利益20億円。

安定していて、赤字になる可能性も低い。

普通なら優良事業です。

しかし、その事業には200億円の資本が投下されているとします。

ざっくり言えば、投下資本に対して10%程度の利益しか生んでいない。

一方、その会社にはB事業があり、

50億円追加投資すれば、かなり高い収益率で拡大できる。

さらに、A事業を他社へ売却すれば300億円で売れるとする。

この場合、経営者が考えるべきことは、

「A事業は黒字か」

ではありません。

A事業を持ち続けることと、A事業を300億円で売って別の場所へ資本を移すことの、どちらが株主価値を高めるか。

です。

ここで初めて、

事業運営

事業所有

が分離します。

A事業は良い会社かもしれない。

しかし、

自分たちが所有するには高すぎる資産

になっている可能性がある。

良い資産ほど「売り時」が生まれる

これは株式投資と同じです。

素晴らしい企業だからといって、どんな株価でも買っていいわけではない。

企業の質と投資対象としての魅力は別です。

同様に、

良い事業だから持ち続けるべき

とは限らない。

その事業を他社が非常に高く評価してくれるなら、

売却した方が合理的になることがあります。

たとえば自社ではA事業から年間20億円しか生み出せない。

しかし買い手企業は、

  • 自社の販売網を使える
  • 重複コストを削れる
  • 顧客基盤を統合できる
  • 技術を横展開できる
  • クロスセルできる

ため、A事業を買えば年間35億円生み出せると考えている。

そうすると、買い手は自社より高い価格を提示できます。

このとき売却は、

事業を諦める行為

ではありません。

むしろ、

その資産を最も高く評価する所有者へ移転する行為

です。

市場経済では、これが日常的に起こります。

「誰が持つと一番価値が高いか」という視点

企業買収を理解するうえで、かなり重要なのがここです。

ある事業の価値は、誰が所有しても同じではありません。

同じホテルでも、

単独のオーナーが持つ場合と、

世界中に会員基盤を持つホテルチェーンが持つ場合では価値が違う。

同じソフトウェア会社でも、

単独企業として売る場合と、

巨大な販売網を持つ企業が買収する場合では価値が違う。

同じ食品ブランドでも、

小規模企業が持つ場合と、

全国のスーパー・コンビニとの強い流通網を持つ企業が持つ場合では価値が違う。

つまり事業価値には、

standalone value

と、

owner-specific value

があります。

この差がシナジーです。

そして売り手から見ると、

「自分が持っている価値」

より、

「他人が持った場合の価値」

の方が大きいなら、

その差額を売却価格として受け取れる可能性があります。

だから、

優良事業ほど売却候補になることすらある。

買い手も欲しがるからです。

経営者が見るべきなのは「利益」よりOpportunity Cost

ここで、会社員的な見方と資本配分者の見方が大きく分かれます。

現場責任者は、

「この事業で年間20億円稼いでいます」

と言う。

経営者は、

「その事業に拘束されている300億円を他へ動かしたら、いくら稼げるのか」

と考える。

つまり重要なのは、絶対額ではなく機会費用です。

何かを所有するということは、

その資本を他に使えないということです。

100億円の土地を持つ。

100億円を工場に使う。

100億円で会社を買う。

100億円で自社株を買う。

100億円を株主へ返す。

すべて競合しています。

したがって、

「利益が出ているから売らない」

という判断は、

売却代金を別用途に使った場合のリターンを無視している。

経営判断としては片側しか見ていません。

ここでHurdle Rateが出てくる

企業は本来、新しい投資に対して、

最低限これくらいのリターンは欲しい

という基準を持っています。

いわゆるhurdle rateです。

資本コストが仮に8%なのに、

ある事業が長期的に5%しか生まないなら、

会計上黒字であっても、経済的には価値を破壊している可能性があります。

なぜなら、

投資家から預かった資本にはコストがあるからです。

100億円使って5億円稼いだ。

会計上は利益5億円。

しかし同じリスクで8億円必要だったなら、

実質的には3億円分の価値を失っている。

ここに、

Accounting Profit

Economic Profit

の違いがあります。

黒字か赤字かというPLだけでは、資本配分は判断できません。

「ROICがWACCを上回るか」だけでも足りない

ここまでなら、少しファイナンスを知っている人なら、

「ROIC > WACCなら価値創造ですね」

で終わるでしょう。

しかし、さらに一段あります。

ROICが15%でWACCが8%。

確かに価値を作っています。

では持ち続けるべきか。

まだ決まりません。

なぜなら、

売却価格

が存在するからです。

ある買い手がその事業を500億円で欲しがっている。

500億円を売却で受け取り、

自社が20%で再投資できる事業に投入できるなら、

15%で運用し続けるより売却した方がいい。

つまり、

良い事業を売るかどうかは、その事業の収益率だけでは決まらない。

  1. 現在の事業収益率
  2. 将来の再投資余地
  3. 売却可能価格
  4. 売却代金の再投資先
  5. 税金・取引コスト
  6. 戦略的価値
  7. リスク

を比較して初めて決まります。

ここまで来ると、

「黒字なのになぜ売る?」

という問い自体がかなり粗いことがわかります。

企業価値を決めるのは「現在の利益」だけではない

特に重要なのが再投資可能性です。

A事業はROIC 30%。

非常に優秀です。

しかし市場が成熟していて、追加投資できる余地がほとんどない。

年間10億円しか再投資できない。

B事業はROIC 18%。

Aより低い。

しかし市場が巨大で、年間100億円を再投資できる。

この場合、企業価値へのインパクトはBの方が大きくなることがあります。

つまり、

高収益率

だけでなく、

高収益率でどれだけ長く、大量に再投資できるか

が重要です。

これは投資家の世界では極めて重要ですが、会社員の評価制度ではあまり出てきません。

現場は「今期いくら利益を出したか」で評価されるからです。

しかし経営者は、

次の10年間、どこに資本を置くか

を考えなければいけない。

時間軸が違います。

事業ポートフォリオ経営の本当の意味

ここから、いわゆる「事業ポートフォリオ」という話が出てきます。

ところが、多くの会社のポートフォリオ経営は、

  • 成長事業
  • 安定事業
  • 新規事業
  • 不採算事業

と分類して終わります。

それではあまり意味がありません。

本当に重要なのは、

資本をどこから抜き、どこへ移すか

です。

資本配分が変わらなければ、ポートフォリオを描いても会社は変わりません。

成熟事業からキャッシュを抜く。

非中核事業を売却する。

高成長領域に投資する。

M&Aする。

逆に投資機会がなければ株主へ返す。

これが実行されて初めてポートフォリオ経営になります。

要するに、

ポートフォリオとは分類表ではなく、資本移動の設計図です。

なぜ日本企業は黒字事業を捨てにくいのか

ここには組織論的な問題もあります。

事業には人がいます。

部長がいる。

役員がいる。

歴史がある。

創業事業だったりする。

工場がある。

取引先がいる。

「この事業は創業以来50年間続いてきた」

という物語もある。

売却すると、

誰かのポストが消える。

担当役員の権限が小さくなる。

売上高が減る。

従業員数も減る。

会社の見た目が小さくなる。

したがって、

企業価値最大化という合理性

と、

組織維持という合理性

が衝突します。

これが事業売却を難しくします。

赤字ならまだ切りやすい。

しかし黒字事業は、

「儲かっているじゃないか」

という最強の反論を持っています。

だからこそ、本当に資本効率を重視する経営では、

赤字事業を切れるかではなく、黒字事業まで切れるか

が試されます。

赤字を切るのは整理です。

黒字を切って、より高い価値創造先へ資本を動かすのが資本配分です。

GEのような複合企業が成立する条件

複数事業を一つの会社が所有する意味も、ここから考えられます。

本社が、

「どの事業へ資本を配ればよいか」

を市場より上手く判断できるなら、複合企業には意味があります。

逆に、本社の資本配分能力が低いなら、

それぞれ独立企業にして市場に資本配分させた方がいい。

これがコングロマリット・ディスカウントを考える一つの入口になります。

つまり、

複数事業を持っていること自体には価値がない。

本社が、

  • 資本
  • 人材
  • ブランド
  • 技術
  • 顧客基盤
  • データ

を事業間で再配分することによって、

単独企業以上の価値を生み出して初めて意味がある。

本社が単なる管理コストなら、存在しない方がいい。

かなり厳しい話ですが、資本市場から見ればそうなります。

CEOの仕事は「事業を成功させること」ではない

ここまで考えると、CEOという仕事の見え方も変わります。

事業部長は、

自分の事業を成功させる

ことが仕事です。

しかしCEOは違います。

場合によっては、

成功している事業部長の事業を売却する

ことが仕事になります。

なぜならCEOの最適化対象は、

個別事業ではなく会社全体だからです。

ここには明確な階層差があります。

営業部長は営業を最大化する。

事業部長は事業利益を最大化する。

CFOは資本効率を見る。

CEOは事業ポートフォリオ全体を見る。

株主は、その会社そのものを所有する価値を見る。

PEファンドなら、

その会社をいつ買い、どう変え、いつ誰に売るか

まで見る。

上の階層へ行くほど、

「今あるものを頑張って伸ばす」

という発想から離れていきます。

そして、

そもそも何を所有するのか

を決めるようになる。

 


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西園寺貴文(憧れはゴルゴ13)#+6σの男

   




"make you feel, make you think."

 

SGT&BD
(Saionji General Trading & Business Development)

新たなるハイクラスエリート層はここから生まれる
         




Lose Yourself , Change Yourself.
(変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気を我らに与えたまえ。変えることのできないものについては、それを受け入れられる冷静さを与えたまえ。そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを、見分ける知恵を与えたまえ。)
 
説明しよう!西園寺貴文とは、常識と大衆に反逆する「社会不適合者」である!平日の昼間っからスタバでゴロゴロするかと思えば、そのまま軽いノリでソー◯をお風呂代わりに利用。挙句の果てには気分で空港に向かい、当日券でそのままどこかへ飛んでしまうという自由を履き違えたピーターパンである!「働かざること山の如し」。彼がただのニートと違う点はたった1つだけ!そう。それは「圧倒的な書く力」である。ペンは剣よりも強し。ペンを握った男の「逆転」ヒップホッパー的反逆人生。そして「ここ」は、そんな西園寺貴文の生き方を後続の者たちへと伝承する、極めてアンダーグラウンドな世界である。 U-18、厳禁。低脳、厳禁。情弱、厳禁。