40代の早期退職は後悔する?――割増退職金1500万円の封筒が、なぜ妙に重いのか

月曜日、午後4時23分。

社内ポータルに見慣れないPDFが上がる。

「ネクストキャリア支援施策について」

「セカンドキャリア支援制度」

「特別転進支援プログラム」

名前はいろいろあります。

PDFを開く。

対象年齢。

勤続年数。

募集期間。

再就職支援。

そして目が止まる。

退職金、通常額に加えて特別加算。

仮に1500万円。

隣の席では誰かが普通にExcelを開いています。

複合機も動いている。

午後5時から会議もある。

でも自分の人生にだけ、突然1500万円の値札が付いた。

家へ帰ってから検索します。

「40代 早期退職 後悔」

検索結果には、

辞めてよかった。

辞めなければよかった。

再就職できない。

自由になった。

退職金が減った。

いろいろ出てくる。

さて、1500万円は高いのでしょうか。

2025年度、希望退職は2万人を超えた

これは珍しい話ではなくなっています。

東京商工リサーチによると、2025年度に早期・希望退職募集が判明した上場企業は46社、募集人数は2万781人。前年度8336人の約2.5倍で、2009年度以降4番目の高水準でした。

しかも46社のうち32社、69.5%は直近決算が黒字。人数では1万6908人、81.3%が黒字企業による募集です。

パナソニックHD、三菱電機、三菱ケミカルグループ、シャープなど、大企業の名前が並びました。

会社が潰れそうだから人を減らす。

これは分かります。

ところが黒字なのに人を減らす。

ここから話が少し変になります。

40代で早期退職すべきか。普通の確認事項はかなり明確である

まず普通の答えを済ませます。

退職後の生活費。

住宅ローン。

教育費。

配偶者の収入。

金融資産。

退職金の手取り。

再就職可能性。

次の年収。

健康保険。

年金。

失業給付。

この辺は当然確認した方がいい。

退職金の税制も普通の給与とはかなり違います。一般的な退職手当なら、退職所得控除は勤続20年以下では原則40万円×勤続年数、20年超なら800万円+70万円×20年を超えた勤続年数です。一般退職手当等では、控除後の金額の原則2分の1が退職所得になります。

だから、

「1500万円もらえる」

だけではなく、

税引後でいくら残るか。

何年暮らせるか。

次の所得がどの程度になりそうか。

を見る。

ここまでは普通です。

ただ、私はもっと手前に妙なものを感じます。

なぜ会社は、あなたが辞めるために1500万円も払うのでしょう。

普通、いらない物を捨てるのに1500万円は払わない

古い椅子がある。

いらない。

粗大ゴミへ出す。

数百円とか数千円です。

ところが社員には、

「辞めていただけるなら1500万円追加します」

と言う。

会社にとって本当に価値ゼロなら、妙です。

もちろん日本では会社が好き勝手に社員を解雇できるわけではありません。

労働契約法16条では、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合、権利濫用として無効になります。厚生労働省も「使用者がいつでも自由に行えるものではない」と説明しています。

だから希望退職では、

会社が一方的に切る

のではなく、

社員側に辞めてもらう。

そのために条件を付ける。

ここまでは分かります。

でも、この構図、どこかで見たことがあります。

古い雑居ビルで、大家から500万円を提示された

駅前に古いビルがあります。

一階には30年前から小さな喫茶店が入っている。

赤いソファ。

漫画。

スポーツ新聞。

アイスコーヒー580円。

ある日、大家が来ます。

「この建物を建て替えることになりまして」

店主は出ていきたくない。

大家は、

「では500万円お支払いします」

と言う。

500万円。

店主は得をしたのでしょうか。

少し違います。

大家が500万円払ってでも欲しいものがあります。

空室です。

もっと正確には、

その場所を自由に使える状態。

喫茶店が存在している限り、再開発できない。

だから店主が持っている「ここに居続けられる状態」に価格が付いた。

500万円は祝金ではありません。

何かを買い取るための金です。

では会社は、退職金で何を買っているのか

40代会社員。

年収900万円。

あと15年働く可能性がある。

給与。

賞与。

会社負担の社会保険料。

福利厚生。

オフィス。

管理コスト。

将来の昇給。

退職金。

本人が会社へ生み出す価値も当然あります。

しかし会社が事業ポートフォリオを変える。

工場を閉じる。

間接部門を縮小する。

生成AIで業務を減らす。

海外事業を売る。

本社機能を軽くする。

すると、

昨日まで合理的だった人員構成

が、

明日には合理的でなくなる。

人間が急にダメになったわけではありません。

会社側の最適解が動いた。

そこで会社が金を出す。

あなたの席を空けてもらうために。

TOBでは、なぜ市場価格より高い金を払うのか

株式市場にも似た光景があります。

TOB。

株式公開買付け。

ある会社の株価が1000円だったとします。

買収したい会社が、

「1300円で買います」

と言う。

30%のプレミアムです。

親切でしょうか。

「株主の皆さん、いつもありがとうございます。300円余計に差し上げます」

ではありません。

欲しいからです。

株式を集めたい。

経営権を取りたい。

非公開化したい。

再編したい。

普通の市場価格では十分な株主が売ってくれない。

だからプレミアムを付ける。

売る側から見ると1300円の臨時収入です。

買う側から見ると、将来もっと大きな価値を得るための取得価格です。

同じ1300円なのに意味が逆です。

希望退職の割増金が、急にTOB価格に見えてくる

会社が言います。

通常退職金800万円。

今回だけ特別加算700万円。

合計1500万円。

社員から見る。

「1500万円もらえる」

会社から見る。

「700万円追加すれば、この雇用関係を今終了できる」

同じ金です。

見え方がまるで違う。

もちろん雇用契約は株式ではありません。

売買可能な有価証券でもありません。

法的には全く別物です。

でも経済構造だけ抜くと似ています。

片方が、

現在存在している権利関係を終わらせたい。

もう片方は、

その関係を続けることにも価値を感じている。

だからプレミアムを提示する。

早期退職制度が、少し違うものに見えてきます。

社債にも「早く返すから少し余計に払う」がある

さらに金融市場にはcallable bond、期限前償還可能な社債があります。

例えば企業が昔、金利5%で社債を発行した。

その後、市場金利が2%まで下がった。

企業からすると、

「この5%、ずっと払い続けたくないな」

となる。

条件によっては社債を期限前償還する。

ただし投資家は、本来なら今後も5%のcouponを受け取れるはずだった。

だからcall premiumなどが付くことがあります。

企業は、

将来続く支払いを終了するために、今日少し余計に払う。

また同じ構造が出てきました。

喫茶店。

TOB。

callable bond。

希望退職。

表面は全然違います。

地下で一本につながっている。

1500万円は「あなたの価値」ではない

ここで結構大事な話になります。

希望退職の対象になる。

傷つく人がいます。

「会社にいらないと言われた」

逆に、

「1500万円も出すなら得じゃん」

と興奮する人もいる。

両方とも、少し人間的すぎる解釈かもしれません。

1500万円は、

あなたという人間の値段

ではありません。

会社にとって、

今ある雇用関係を終了させるために払ってもよい価格

です。

だから非常に優秀な社員でも対象になることがある。

黒字企業でもやる。

本人の人格評価とは別の話です。

パナソニックHDや三菱電機のような企業まで大規模な構造改革をする2025年度の状況を見ると、「業績悪化した会社がダメ社員を切る」という昔の絵だけでは説明できなくなっています。

では、1500万円で売っていいのか

ここからが本当の問題です。

TOBなら株主は考えます。

1300円は高いのか。

まだ上がるのか。

売らなければどうなるのか。

別の買い手が来るのか。

希望退職でも同じです。

1500万円そのものを眺めても答えは出ない。

売ろうとしているものの価値を見なければならない。

あと10年、15年の給与。

賞与。

企業年金。

福利厚生。

現在の肩書。

社内ネットワーク。

雇用の安定性。

転職市場での自分の価格。

そして、

この会社に残り続けることで失うかもしれない別の人生。

全部です。

最後の一個だけ、Excelに入れにくい。

40代の転職は、全部年収ダウンでもない

「40代で辞めたらもう同じ給料は無理だ」

という話もよくあります。

ところが厚生労働省の2024年雇用動向調査では、転職入職者のうち、前職より賃金が増えた人は40~44歳で45.9%、減った人は29.0%。45~49歳でも増加46.4%、減少23.8%でした。

一方、55~59歳になると増加27.4%に対し減少36.6%となっています。

もちろんこれは希望退職者だけのデータではありません。

職種も会社も人によって全く違う。

ただ、

40代=転職した瞬間に必ず暴落

でもない。

年齢だけで答えは決まりません。

むしろ重要なのは、自分が会社の外で何として値段が付くかです。

名刺を一枚剥がすと、商品名がなくなる人がいる

会社に20年いる。

課長。

部長。

本部長。

名刺には有名企業のロゴ。

取引先へ電話すると出てもらえる。

社内なら、

「あの案件なら佐藤さんに聞け」

と言われる。

希望退職。

社員証を返す。

名刺の箱が机に残る。

翌月。

ただの佐藤さん。

これは結構怖い。

能力が消えたわけではありません。

でも市場でそれを説明する包装が一枚なくなった。

「○○株式会社の部長」

は、一行で意味が通ります。

「いろいろできます」

は急に弱い。

早期退職で失うのは給与だけではない。

市場に自分を説明してくれていた巨大な固有名詞も失う。

だから再就職支援会社の面談で、急に言葉に詰まる

「あなたの強みは何ですか」

20年間、仕事をしてきた。

会議もした。

部下もいた。

売上も作った。

何百億円の案件にも関わった。

なのに、

「強み……」

となる。

会社の中では価値が明らかだった。

会社の外へ出た瞬間、その価値を別の言語へ翻訳しなければならない。

これを市場価値と言うと簡単です。

でも実際には、

社内専用フォーマットだった自分を、外部互換フォーマットへ変換する作業

です。

退職後に初めてこれを始めると、少し遅い。

会社と社員は、同じ未来を見ていない

希望退職には、もう一つ面白い構造があります。

会社には会社の情報があります。

5年後に縮小したい事業。

AI化したい業務。

売却候補の子会社。

海外へ移したい機能。

人員構成。

年齢構成。

人件費。

社員には全部は見えません。

一方、社員にも会社が知らない情報があります。

自分が外でどれくらい稼げるか。

昔から温めていた商売。

副業。

資産。

配偶者の収入。

もう会社に飽きていること。

つまり、会社と社員は互いに違う秘密を持っています。

そこで1500万円という価格が置かれる。

かなりゲームっぽい。

会社が1500万円を提示した理由と、自分が1500万円を魅力的に感じる理由は違う

会社。

今後この雇用関係を維持するより、1500万円払って終了した方がいい。

社員。

今後この雇用関係を維持するより、1500万円もらって外へ出た方がいい。

両方がそう考えたとき、取引が成立します。

会社が勝って社員が負けるとは限らない。

社員が勝って会社が負けるとも限らない。

会社にとって不要になった配置から出て、本人が別の場所でさらに価値を出せるなら、双方得をすることすらある。

これが本来の希望退職です。

問題は、

相手だけが計算していて、自分は1500万円という数字に興奮している

場合です。

会社側には人事部。

財務。

経営企画。

事業計画。

人員計画。

弁護士。

コンサルタント。

いろいろいます。

こちら側は、夜11時に一人でGoogleを見ている。

少し戦力差があります。

「残る」ことにも価格がある

希望退職を断る。

会社に残る。

何も売らなかった。

そう見えます。

でも残留も一つの投資です。

今後の自分の労働時間。

人的資本。

キャリア。

を、その会社へ引き続き集中投資する。

黒字リストラを実施する会社は、

「今までと同じ人員構成を未来まで維持しない」

と自ら宣言しているとも読めます。

それでも残るなら、

この会社の未来へ賭ける理由

が必要になる。

希望退職は、

辞める側だけが決断する制度

ではありません。

残る側にも、

「なぜこの銘柄を保有し続けるのか」

という問いが発生している。

ここはかなり見落とされます。

早期退職で後悔する人は、1500万円を使い切った人ではない

旅行。

車。

住宅ローン返済。

投資。

一年休む。

何に使ってもいい。

それ自体で後悔が決まるわけではありません。

もっと危ないのは、

何を売ったのか分からないまま売ること

です。

会社員という立場には、

給与だけではなく、

未来の給与。

社会的信用。

人間関係。

情報。

肩書。

生活リズム。

所属感。

会社の中だけで通用する能力。

そして、

明日もそこへ行けるという予測可能性

まで付いています。

1500万円で手放すのは、机ではありません。

この束です。

だから重い。

退職金は、ご褒美ではなかった

40代で早期退職。

1500万円の割増退職金。

最初は、

「会社を辞める代わりにもらえるお金」

に見えました。

でも少し違う。

古いビルの立ち退き。

TOBのプレミアム。

callable bondの期限前償還。

全然違う世界を歩いてきたら、同じ構造が見えてきました。

誰かが、

今ある関係を予定より早く終了させたい。

しかし相手にも、それを続ける価値がある。

だから価格を付ける。

希望退職の割増退職金とは、

会社からあなたへのプレゼント

ではないのかもしれません。

会社が、あなたの「ここに居続ける未来」に提示した買い取り価格。

そう考えると、判断基準も変わります。

1500万円は多いか。

ではない。

1500万円で、何を売るのか。

です。

会社側はたぶん、その計算をしています。

だから黒字でも2万人規模の早期・希望退職が起きる。

社員側も、同じくらい計算した方がいい。

ただし一つ困ります。

未来の給与なら電卓で計算できる。

住宅ローンも計算できる。

退職所得控除も計算できる。

次の年収も、ある程度調べられる。

でも、

あと15年この会社にいる人生

と、

この封筒を持って明日から外へ出る人生

の差額だけは、源泉徴収票のどこにも書いていません。

早期退職で本当に怖いのは、1500万円を失うことではない。

自分が売ったものの値段を、10年後になって初めて知ることなのかもしれません。


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西園寺貴文(憧れはゴルゴ13)#+6σの男

   




"make you feel, make you think."

 

SGT&BD
(Saionji General Trading & Business Development)

新たなるハイクラスエリート層はここから生まれる
         




Lose Yourself , Change Yourself.
(変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気を我らに与えたまえ。変えることのできないものについては、それを受け入れられる冷静さを与えたまえ。そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを、見分ける知恵を与えたまえ。)
 
説明しよう!西園寺貴文とは、常識と大衆に反逆する「社会不適合者」である!平日の昼間っからスタバでゴロゴロするかと思えば、そのまま軽いノリでソー◯をお風呂代わりに利用。挙句の果てには気分で空港に向かい、当日券でそのままどこかへ飛んでしまうという自由を履き違えたピーターパンである!「働かざること山の如し」。彼がただのニートと違う点はたった1つだけ!そう。それは「圧倒的な書く力」である。ペンは剣よりも強し。ペンを握った男の「逆転」ヒップホッパー的反逆人生。そして「ここ」は、そんな西園寺貴文の生き方を後続の者たちへと伝承する、極めてアンダーグラウンドな世界である。 U-18、厳禁。低脳、厳禁。情弱、厳禁。