ブランド品はなぜ高い?――エルメスのバーキンを分解したら、最後に牛革が消えた

世界で最も有名なバッグの一つは、飛行機の中で生まれました。

1984年、パリからロンドンへ向かう飛行機で、ジェーン・バーキンの隣にエルメスのジャン=ルイ・デュマが座った。バーキンが「母親が使いやすいバッグがない」というような話をして、デュマがその場でバッグをスケッチした。

それがバーキンになった。

エルメス公式にもこの話が載っています。

飛行機で隣になった人に「いいバッグないんですよね」と言ったら、40年後には世界中の金持ちが欲しがっている。

人生、何が起きるかよく分かりません。

でも今日は人生の話ではありません。

バッグの話です。

たぶん。

牛はエルメスを知らない

まず検索してきた人の疑問に答えると、ブランド品が高い理由は普通にあります。

高品質な素材。熟練職人による製造。大量生産しにくいこと。希少性。長年のブランド。需要の強さ。流通の制限。そして中古市場でも値段が付くこと。

バーキンなら、一人の熟練職人が一つを作るのに最大40時間ほどかかるとChristie’sは説明しています。サドルステッチも機械で同じようには再現できません。

だから高い。

これで記事を終えてもいい。

でも、少し気になります。

革です。

バーキンも革でできています。

革ということは、かなり乱暴に言えば元は牛です。

牛は自分がエルメスになるとは知りません。

「俺は将来バーキンになるから、その辺の牛とは違う」

とは思っていない。

たぶん草を食っています。

そこから人間が革を加工し、職人が縫い、金具を付け、エルメスという名前を付ける。

すると値段が猛烈に上がる。

どの瞬間に「牛」が「エルメス」になったのでしょう。

偽物が本物そっくりになるほど、話がおかしくなる

ブランド品には偽物があります。

雑な偽物なら簡単です。

縫製が変。

革が安い。

ロゴがズレている。

だから安い。

でも、ものすごく精巧な偽物を想像してみます。

革の質感も同じ。

重さも同じ。

縫い目も同じ。

金具も同じ。

専門家でもパッと見では分からない。

それでも本物と偽物の値段は同じにはなりません。

ここで妙なことが起きます。

物体としての差をどんどんゼロへ近づけたのに、価格差がゼロにならない。

では、その差額はどこに入っているのでしょう。

バッグの中を開けても入っていません。

ポケットにもない。

革を顕微鏡で見てもない。

どうやら値段の一部が、バッグの外側にある。

東大の卒業証書も、かなり変な紙である

急に東大の話をします。

東京大学の卒業証書があります。

紙です。

同じ大きさの紙を文房具店で買えば数十円とか数百円でしょう。

でも自分でWordを開いて、

東京大学卒業証書

と印刷して壁に飾っても、東大卒にはなりません。

紙の品質の問題ではない。

本物と寸分違わない紙を作ってもダメです。

違いは、

「この人が本当に東京大学へ入り、そこで所定の過程を終え、大学がそれを認証した」

という、紙の外側にある履歴です。

だから卒業証書を破いても、普通は学歴まで破れません。

履歴は紙に入っていないからです。

ここでバーキンと東大卒業証書が少し似てきます。

物体より、その物体が背負っている履歴の方が重い。

一万円札も、紙だけ見たらかなりボッタクリである

一万円札があります。

原材料だけ見れば一万円しません。

でもコンビニへ持っていけば一万円分のものを買える。

なぜか。

日本社会のみんなが、

「これは一万円として扱いましょう」

と合意しているからです。

明日の朝、日本中の人が突然、

「もう一万円札って500円くらいじゃね?」

と思い始めたら大変です。

紙そのものは昨日と同じなのに、世界が壊れる。

ここまで考えると、価格というものが少し気持ち悪くなってきます。

物に値段が付いている。

普通はそう思います。

でも実際には、

人間の頭の中

人間の頭の中

人間の頭の中

社会

と大量にコピーされた認識の上に、値段が乗っているものがある。

一万円札は極端ですが、ブランドにも少し似たところがあります。

もし明日、全人類がエルメスを忘れたらどうなるのか

変な実験をします。

明日の朝、世界中の人間からエルメスに関する記憶だけを消します。

バッグは残る。

革も残る。

職人技も残る。

金具も残る。

縫製も昨日と全く同じ。

でも、

HERMÈS

という文字を見ても誰も知らない。

ジェーン・バーキンも知らない。

歴史も知らない。

希少性も知らない。

オークション市場も知らない。

さて、そのバッグは昨日と同じ値段で売れるでしょうか。

たぶん難しい。

面白いのは、バッグには一切触っていないことです。

壊したのは人間の記憶だけです。

商品の価値を壊したいのに、商品を壊す必要がなかった。

ブランドは、人間の頭の外に置かれた巨大な記憶なのかもしれない

ここでブランドというものが、ロゴではなく別のものに見えてきます。

エルメス。

シャネル。

フェラーリ。

ロレックス。

名前を一個見ただけで、大量の情報が頭に出てきます。

高い。

歴史がある。

職人。

金持ち。

希少。

フランス。

高級。

欲しい。

興味ない。

成金っぽい。

上品。

人によって内容は違います。

でも数文字のブランド名に、大量の情報が圧縮されている。

ZIPファイルみたいです。

HERMÈS.zip。

クリックすると、100年以上積み上がった人間の記憶が展開される。

もちろん本当のZIPではありません。

そういうソフトはない。

あったら少し欲しいです。

そういえばNFTはもっと変だった

数年前、NFTがものすごい値段で売れていました。

画像そのものはコピーできる。

右クリックで保存できる。

同じJPEGを自分のパソコンに置ける。

それでも、

「ブロックチェーン上で、このトークンを所有しているのは誰か」

に値段が付いた。

当時、

「画像なんてコピーできるじゃん」

という批判が大量にありました。

それは正しい。

でも、バーキンの精巧な偽物も少し似ています。

物体や見た目をコピーできても、

来歴

までコピーできない。

つまり人間は時々、商品ではなく、

「この物がどこから来たのか」

を買っています。

ここでバッグが少し戸籍みたいに見えてきました。

バッグにも出生がある。

バッグなのに中古になると投資商品っぽくなる

さらにおかしいことがあります。

普通のバッグは使ったら中古になり、値段が下がります。

しかし希少なバーキンなどは、二次市場で非常に高い価格が付くことがあります。

Christie’sも、希少性や排他性がバーキンの二次市場価値を押し上げ、コレクター市場を形成していると説明しています。2026年6月には限定仕様のBirkin 30がオンラインオークションで3万5560ユーロで落札された例もあります。

バッグを買ったはずなのに、

値上がりした。

売れる。

相場を見る。

保管状態を気にする。

オークションへ出す。

突然、株みたいなことを始める。

ただし株と違って配当は出ません。

スマホは入ります。

金融商品としてはかなり収納力が高い。

高いから欲しくなる、という逆流まで起きる

普通は、

欲しい

需要が増える

値段が上がる

です。

でも高級品では逆向きの矢印が入ることがあります。

高い

誰でも買わない

希少に見える

持つこと自体に意味が出る

欲しい人が増える

Oracleの小売向け解説でも、高級ブランドでは高価格そのものが独占性やステータスを伝える「プレステージ価格」の働きを持つとされています。

ここで価格は商品の結果ではなく、商品の原因にもなる。

値段が商品を作っている。

かなり変です。

値段というものを商品の外側に付いているシールだと思っていたのに、途中から商品の部品になってきました。

100万円のバッグは、持っている人まで加工する

バーキンを腕に持つ。

バッグは昨日と同じです。

でも周囲の人間がそれを見る。

「あ、バーキンだ」

と思う人がいる。

金持ちなのかな。

詳しい人なのかな。

本物かな。

何とも思わない人もいる。

するとバッグが、持っている人について情報を発信し始める。

バッグを人間が持っているはずなのに、途中からバッグが人間の説明書になっている。

これは高級時計もそうです。

大学名もそうです。

勤務先もそうです。

役職もそうです。

SNSのフォロワー数も少しそうです。

人間は自分について全部説明するのが面倒なので、記号をぶら下げる。

「私はこういう人です」

を物体に外注する。

名刺なんてほぼそれです。

人間もブランド品と同じことをしている

例えば同じ人がいます。

昨日まで無名企業勤務。

今日からGoogle勤務。

頭の中は一日で2倍賢くなったわけではありません。

身体も同じ。

でも名刺の会社名が変わった瞬間、周囲の扱いが変わることがある。

東大。

ゴールドマン・サックス。

医師。

弁護士。

フォロワー100万人。

肩書を見ることで、我々は相手について大量の推論をします。

当たっているかどうかは別です。

人間も、他人の頭の中に値段の一部分を置いて生きている。

この辺まで来ると、エルメスを笑えなくなってきます。

自分もロゴを着ています。

会社員なら首から社員証までぶら下げている。

でも職人が40時間かけているのは本当です

ここで話を戻します。

ブランドなんて全部幻想です。

原価数万円のものをバカが買っています。

という結論にはなりません。

それも雑です。

バーキンには実際に高度な職人技がある。素材も違う。大量生産しにくい。希少性もある。Christie’sによれば一人の職人が最大40時間を費やします。

つまり、

物理的価値

もある。

その上に、

歴史。

希少性。

所有履歴。

認証。

他人からの認識。

中古市場。

ブランド。

が何層にも乗っている。

ミルフィーユみたいです。

牛から始まったのに、ものすごいものを背負わされています。

原価率を計算すると見失うものがある

「原価はいくらなの?」

高級品を見ると聞きたくなります。

分かります。

原価10万円なら100万円は高すぎる。

という感じがする。

でも東大の卒業証書の紙代を計算しても、東大の価値は分かりません。

一万円札の製造費を計算しても、一万円の価値は分からない。

映画のDVDのプラスチック原価を計算しても、映画の価値は分からない。

原価分析が有効なのは、

価値が物体内部にかなり入っている商品

です。

でも人間社会には、

物体の外側へ価値がはみ出している商品

があります。

ブランドは、その代表例なのかもしれません。

エルメスの値段は、バッグの中には入っていなかった

最初は、

なぜブランド品は高いのか。

という話でした。

素材がいい。

職人がすごい。

希少だから。

ブランドだから。

これで一応答えです。

でもバーキンを分解していったら、途中でバッグが消えました。

牛革。

職人。

飛行機での偶然。

ジェーン・バーキン。

エルメスという名前。

本物であるという履歴。

中古市場。

それを欲しがる人。

それを見て意味を理解する人。

全部合わせて値段になっている。

つまり一個のバッグに見えていたものが、本当は世界中の人間の記憶まで含んだ巨大な商品だった。

だから偽物を完全コピーしても、コピーできない部分が残る。

革ではありません。

他人の頭です。

これ、少し不気味です。

物を買っているつもりで、他人の記憶を買っている。

そして自分がそれを持つことで、今度は自分もその記憶の一部になる。

ブランドというものは、そうやって人間から人間へ移動しているのかもしれません。

まあ、バッグなので普通に財布も入ります。

最後にそれを忘れるところでした。


===

西園寺貴文(憧れはゴルゴ13)#+6σの男

   




"make you feel, make you think."

 

SGT&BD
(Saionji General Trading & Business Development)

新たなるハイクラスエリート層はここから生まれる
         




Lose Yourself , Change Yourself.
(変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気を我らに与えたまえ。変えることのできないものについては、それを受け入れられる冷静さを与えたまえ。そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを、見分ける知恵を与えたまえ。)
 
説明しよう!西園寺貴文とは、常識と大衆に反逆する「社会不適合者」である!平日の昼間っからスタバでゴロゴロするかと思えば、そのまま軽いノリでソー◯をお風呂代わりに利用。挙句の果てには気分で空港に向かい、当日券でそのままどこかへ飛んでしまうという自由を履き違えたピーターパンである!「働かざること山の如し」。彼がただのニートと違う点はたった1つだけ!そう。それは「圧倒的な書く力」である。ペンは剣よりも強し。ペンを握った男の「逆転」ヒップホッパー的反逆人生。そして「ここ」は、そんな西園寺貴文の生き方を後続の者たちへと伝承する、極めてアンダーグラウンドな世界である。 U-18、厳禁。低脳、厳禁。情弱、厳禁。