SAP Ariba、Coupa、モノタロウ PunchOut、3-way match――大企業ではコピー用紙1箱を買うだけでも「購買システム」が動いている
会社でコピー用紙がなくなった。
Amazonで買えばいい。
個人ならこれで終わります。
ところが大企業では、
社員が勝手にAmazonで買ってはいけない
会社があります。
Amazon Businessを使うにしても、
SAP Ariba。
Coupa。
Oracle。
自社購買システム。
などから入る。
購入申請。
上司承認。
予算確認。
発注。
納品。
検収。
請求。
支払。
という処理を通す。
たかが5000円の備品を買うだけなのに、
発注番号、Purchase Order、PunchOut、検収、3-way match、GR/IR
などという謎の言葉が出てくる。
企業規模が大きくなると、
「安いものを買う」
より、
数万人が勝手な買い方をしない仕組みを作る
方が重要になるからです。
大企業では「買う人」と「購買する人」が違う
例えば営業部の田中さんが、
モニターを1台欲しい。
田中さんは、
「Dellの27インチが3万円なので買いたい」
と思う。
しかし田中さん自身がDellへ発注するとは限りません。
まず、
Purchase Requisition、PR
購買申請を作る。
つまり、
これを買わせてください
という申請です。
そこに、
商品。
数量。
価格。
使用目的。
Cost Center。
Project Code。
勘定科目。
希望納期。
などを入れる。
上司が承認。
場合によっては、
部門長。
予算責任者。
購買部。
情報システム部。
まで承認する。
そして初めて、
Purchase Order、PO
が発行される。
PRとPOは違います。
PR:
社内で買っていいか
PO:
会社として外部へ発注する
です。
この違いを知らずに、
「発注しました」
と言うと、購買担当者から、
「それPRですか、POですか?」
と聞かれたりします。
SAP AribaやCoupaは、この一連の購買を管理する
こうした企業購買で使われる代表的なシステムに、
SAP Ariba
があります。
SAP Ariba Buying and Invoicingでは、購買申請から承認、注文、受領、請求までProcure-to-Payのプロセスを扱っています。SAP自身もGuided Buyingによって、社員を推奨サプライヤーや企業の購買ポリシーに沿った購入へ誘導する仕組みを提供しています。
そしてもう一つ有名なのが、
Coupa
です。
CoupaでもPurchase OrderやSupplier Portalを介した発注・請求処理があり、サプライヤー側がPOから直接Invoiceを作成することもできます。
購買担当者は、
「何を買うか」
だけを管理しているわけではありません。
誰が、どのサプライヤーから、何円で、何の予算を使って、誰の承認で買ったのか
をシステムとして残します。
しかし社員にSAPの商品マスタを検索させても使ってくれない
ここで問題が起こります。
社員からすると、
購買システムなんて面倒です。
Amazonなら、
「HDMIケーブル」
と検索すれば出てくる。
モノタロウなら、
ネジでも、
工具でも、
安全靴でも、
検索すれば出てくる。
ところが社内購買システムでは、
商品コード。
カテゴリ。
サプライヤー。
品目マスタ。
などを指定しなければならない。
使いにくい。
すると社員は、
会社の購買システムを無視して、楽天やAmazonで勝手に買う。
会社によっては法人カード。
個人立替。
請求書後払い。
などで買う。
これを購買の世界では、
Maverick Spend
あるいは、
Rogue Spend
と呼びます。
SAPも、承認された契約や購買プロセスを迂回した購入をMaverick Spendingとして扱っています。
会社側からするとかなり困ります。
なぜ社員が安く買うと会社が困るのか
例えば会社がモニターを、
A商社と年間契約している。
通常価格4万円。
年間5000台買う代わりに、
会社価格3万円。
ところが社員が、
Amazonで2万9000円を見つけた。
「こっちの方が1000円安いじゃん」
と思って買う。
一見合理的です。
でも会社全体では話が違います。
A商社との年間購入数量が減る。
価格交渉力が落ちる。
請求先が増える。
支払先マスタも増える。
セキュリティ審査も必要。
取引条件もバラバラ。
故障時の対応もバラバラ。
購買実績も集計できない。
さらに各社員が、
価格比較。
発注。
領収書。
経費精算。
をやっている。
商品価格1000円を節約するために、
社員が30分使っていたら、
そちらの方が高いかもしれません。
だから大企業の購買では、
商品単価
だけではなく、
調達に伴うTransaction Cost
を見ます。
そこでPunchOutという謎の仕組みが出てくる
社員にはAmazonやモノタロウの便利な検索画面を使わせたい。
しかし会社としてはSAP AribaやCoupaを通したい。
この二つを同時に実現する仕組みが、
PunchOut
です。
例えばSAP Aribaへログインする。
↓
モノタロウを選択。
↓
モノタロウの商品サイトへ移動する。
↓
ネジや工具を普通に検索。
↓
カートへ入れる。
↓
購入確定……
ではなく、
購買システムへ戻る。
↓
選んだ商品・価格・数量がSAP Ariba側へ返る。
↓
社内承認。
↓
PO発行。
↓
正式発注。
という流れです。
SAP AribaもSupplier側Webサイトへ移動し、商品を選択して購買システムへ戻すPunchOut Catalogを提供しています。CoupaでもcXMLを使ってCoupaとサプライヤーECを接続するPunchOut Catalogがあります。
Amazon BusinessもPunchOutできる
この仕組みは概念だけではありません。
Amazon Businessも、企業が利用する購買システムとパンチアウト連携し、Amazon Businessを外部カタログとして利用できる仕組みを提供しています。
つまり、
買い物画面はAmazon。
しかし、
購買管理は会社側。
です。
社員から見るとAmazonで買っているように見える。
しかし裏側では、
SAP Ariba
↓
Amazon Business
↓
SAP Aribaへカート返却
↓
承認
↓
PO
という企業購買プロセスが動いている。
普通にAmazon.co.jpで個人購入するのとは全然違います。
モノタロウにも「モノタロウ PunchOut」がある
日本企業の間接材購買で非常に面白いのが、
MonotaRO
です。
モノタロウには、大企業向けの、
エンタープライズモノタロウ
があり、既存の購買管理システムとモノタロウを接続するPunchOutを提供しています。
実際の導入事例を見ると、
本田技研工業。
TOTO。
三井化学。
ANAホールディングス。
東急。
西松建設。
アドバンテスト。
など、かなり具体的な日本企業名が並んでいます。
三井化学ではAribaとモノタロウの接続、ANAホールディングスではOracle調達システムとの連携事例も公開されています。
つまり、
「工場で手袋が欲しい」
という非常に地味な需要の裏に、
巨大企業の購買システム統合案件が存在しています。
そして届いたら「検収」する
POを出した。
商品が届いた。
終わりではありません。
ここで、
Goods Receipt、GR
が出てきます。
日本語なら、
入荷。
受領。
検収。
などです。
例えば、
PO:
ノートPC100台
1台10万円
合計1000万円
を発注した。
しかし実際に届いたのは90台。
だったとする。
サプライヤーから請求書は、
100台1000万円。
この状態で1000万円払ってはいけません。
そこで、
PO
Goods Receipt
Invoice
を突き合わせる。
これが3-way match
購買実務では、
3-way matching
という言葉があります。
ざっくり言えば、
1. Purchase Order
何を発注したか。
2. Goods Receipt
実際に何を受け取ったか。
3. Invoice
何を請求されたか。
この三つを一致させる。
Coupaでも、3-way matchingが必要なPOについて、Receipt等が承認されていないと請求処理できない構成があります。
例えば、
PO 100個 × 1万円
GR 90個
Invoice 100個 × 1万円
なら止める。
一方、
PO 100個 × 1万円
GR 100個
Invoice 100個 × 1万円
なら一致。
請求書処理へ進む。
なぜこんな面倒なことをするのか
社員100人の会社なら、
「あの100万円の請求書、誰か知ってる?」
で済むかもしれない。
社員5万人。
国内外100拠点。
年間請求書100万枚。
となったら無理です。
しかも、
発注者本人が経理へ、
「大丈夫です、払ってください」
と言うだけでは内部統制になりません。
極端な話、
社員が知り合いの会社へ架空発注する。
架空請求書を出させる。
経理が払う。
ということも理論上できる。
だから、
申請
承認
PO
受領
Invoice
支払
を分離します。
購買システムは単なる効率化ツールではありません。
会社の金を誰がどう使えるかを制御するシステム
でもあります。
SAPを使うとGR/IRという謎勘定が出てくる
SAPを触ると、さらに、
GR/IR
という言葉が出てきます。
Goods Receipt / Invoice Receipt。
日本語では、
入庫/請求仮勘定、
GR/IR勘定、
などと呼ばれます。
商品は届いた。
しかしInvoiceはまだ来ていない。
あるいは、
Invoiceは来た。
しかしGoods Receiptが入っていない。
この時間差を処理するために使われます。
SAPにもGR/IR Clearing Accountがあり、Goods ReceiptとInvoice Receiptの動きを突き合わせてクリアする仕組みがあります。
そして月末になると、
経理担当者が、
GR/IRの未消込
を見たりします。
「このPO、商品は入っているのに請求書来てない」
「このInvoice、請求処理されているのにGRがない」
「半年間残っているけど何これ」
となる。
会社の決算は、
こういう地味な残高を一つずつ潰して作られます。
POなし請求書という嫌われ者
さらに実務では、
Non-PO Invoice
があります。
POなし請求書。
社員が購買申請を通さずサービスを注文。
業者が仕事を完了。
突然、経理へ請求書100万円が届く。
経理:
「PO番号は?」
社員:
「ないです」
購買:
「誰が発注したんですか?」
社員:
「私です」
上司:
「聞いてない」
という世界です。
購買部門からすると非常に困る。
発注前なら、
相見積。
価格交渉。
契約条件確認。
予算確認。
サプライヤー審査。
ができます。
しかし商品やサービスを受け取った後に請求書が来たら、
交渉力がほぼなくなります。
「もう使いました」
だからです。
そのため企業によっては、
No PO, No Pay
つまり、
POのない請求書は原則支払わない、
というルールを持たせます。
ただし何でもPOにすればいいわけでもない
例えば、
電気料金。
家賃。
税金。
通信費。
弁護士費用。
緊急修理。
こうしたものまで全部通常の物品POに合わせると面倒です。
そこで、
Blanket PO。
Limit PO。
Service PO。
Contract。
Non-PO Invoice。
Corporate Card。
Expense。
など、購入方法を使い分けます。
つまり購買改革とは、
「全部SAP Aribaを通せ」
ではありません。
購入の性質に応じて、
最も安く、速く、統制できるBuying Channelへ誘導する。
この設計が重要になります。
Tail Spendという地味だが巨大な問題
購買では、
Tail Spend
という概念もあります。
巨大な原材料契約なら、
購買担当者が真剣に価格交渉します。
年間100億円。
1%下げれば1億円。
やる価値がある。
問題は、
年間5万円。
10万円。
50万円。
という小口購入です。
コピー用紙。
電池。
工具。
ケーブル。
洗剤。
作業用品。
文具。
小口業者。
一件一件は小さい。
だから誰も本気で管理しない。
しかし社員5万人分を合計すると巨大になる。
しかも、
処理コストが購入金額に対して異常に高い。
3000円の商品を買うために、
申請10分。
承認5分。
発注処理5分。
検収5分。
請求書処理10分。
経理5分。
などと人間が動いていたら、
商品の値引きより事務コストの方が大きくなります。
だからモノタロウやAmazon Businessのようなカタログ型購買をシステム接続する意味が出てきます。
「最安値で買う」のが購買部の仕事ではない
ここが一般社員の感覚とかなり違います。
例えば、
業者A 900円
業者B 1000円
ならAから買えばいい。
ではありません。
Aは、
納期5日。
最低注文100個。
請求書は紙。
注文はFAX。
返品不可。
支払条件30日。
Bは、
納期翌日。
1個から可能。
PunchOut対応。
Invoice電子連携。
返品可能。
支払条件90日。
だったとする。
100円差しかありません。
会社全体ではBの方が安い可能性がある。
だから購買では、
Unit Priceだけでなく、
Total Cost of Ownership
を見る。
商品価格。
送料。
発注工数。
在庫。
品質。
故障。
返品。
支払条件。
業務処理。
全部です。
支払条件も価格である
例えば同じ1000万円の商品。
A社:
1000万円
30日払い
B社:
1010万円
120日払い
だったとする。
単価ならAが安い。
しかしBなら、
会社は90日長く現金を持っていられる。
大量の購買をする会社では、
Payment Terms
もWorking Capitalに効きます。
だから購買部門の交渉は、
「3%値引いてください」
だけではありません。
価格。
数量。
Rebate。
MOQ。
Lead Time。
Payment Terms。
Warranty。
物流費。
返品条件。
SLA。
全部が交渉対象です。
そして会社は「何を買ったか」さえ分からなくなる
大企業になると非常に奇妙な問題が起こります。
社員が全国・世界中で物を買っている。
でも本社は、
会社全体で何をいくら買っているのか把握できない。
A事業部:
「ABC商事から年間5000万円」
B事業部:
「エービーシー商事から年間3000万円」
C子会社:
「ABC Tradingから2000万円」
実は全部同じ会社。
しかしVendor Masterの表記が違う。
すると、
会社全体では1億円買っているのに、
3000万〜5000万円の取引先が3社あるように見える。
この状態では価格交渉できません。
「弊社グループは御社から年間1億円買っています」
が言えないからです。
そこで、
Spend Analysis
Supplier Normalization
Vendor Master Cleansing
などが必要になります。
購買部門が地味に会社名の名寄せをする理由です。
「購買システムを使わせる」こと自体が一大プロジェクト
SAP AribaやCoupaを入れれば終わりでもありません。
社員が使わない。
以前の業者へメール。
Amazon個人アカウント。
法人カード。
立替。
現場で直接購入。
結局データがシステム外へ逃げる。
だからSAP AribaにはGuided Buyingという発想があります。
社員へ企業ポリシーを暗記させるのではなく、
購買画面側で、
この商品ならこのサプライヤー
この金額ならこの承認ルート
これは契約済み商品
と誘導する。
購買改革の難しさは、
ソフトウェア導入より、
数万人の社員の「買い方」を変えること
にあります。
日本ではBtoBプラットフォームという別の巨大実務もある
さらに請求側へ行くと、
インフォマートの、
BtoBプラットフォーム 請求書
があります。
請求書の発行・受取をデジタル化するサービスで、2025年6月時点で125万社以上が利用するとインフォマートは公表しています。
製造業向けには、
BtoBプラットフォーム 受発注 for 製造業
もあり、
見積。
発注。
納品。
検収。
などの取引書面を電子化しています。
つまり企業間取引は、
「電話して買う」
から、
企業システム同士が注文・納品・請求データを交換する
世界へ移っています。
経営者が見る「購買」と社員が見る「買い物」は全く違う
社員:
「モニター1台買いたい」
購買:
「Preferred Supplierから買ってください」
経理:
「POとInvoiceが一致していますか」
現場:
「Goods Receipt入れました」
SAP:
「GR/IR残っています」
購買企画:
「Maverick Spendが増えています」
CFO:
「支払条件を90日に延ばせないか」
経営:
「年間500億円の間接材Spendを3%下げたい」
同じ買い物が、
階層によって別の問題になります。
5000円の備品購入を見ても、
個人なら、
どこが一番安いか。
大企業なら、
数万人の購買をどう統制し、まとめ、交渉力へ変え、処理コストを下げ、キャッシュアウトまで管理するか。
を見る。
だから、
SAP Ariba。
Coupa。
Amazon Business PunchOut。
モノタロウ PunchOut。
Purchase Requisition。
Purchase Order。
Guided Buying。
3-way match。
Goods Receipt。
Invoice。
GR/IR。
Maverick Spend。
Tail Spend。
Vendor Master。
Spend Analysis。
という巨大な世界が生まれます。
会社というものは、
売る仕組みだけでなく、
買う仕組み
も巨大です。
営業やマーケティングだけを見ていると、この世界はほとんど見えません。
しかし企業の利益は、
売上を増やすだけではなく、
毎年何千億円と出ていく金を、誰から、何を、どんな条件で買うか
でも決まっています。
コピー用紙1箱の裏側にまで巨大なシステムがある。
大企業の面白さは、こういうところにあります。
===
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"make you feel, make you think."
SGT&BD
(Saionji General Trading & Business Development)
説明しよう!西園寺貴文とは、常識と大衆に反逆する「社会不適合者」である!平日の昼間っからスタバでゴロゴロするかと思えば、そのまま軽いノリでソー◯をお風呂代わりに利用。挙句の果てには気分で空港に向かい、当日券でそのままどこかへ飛んでしまうという自由を履き違えたピーターパンである!「働かざること山の如し」。彼がただのニートと違う点はたった1つだけ!そう。それは「圧倒的な書く力」である。ペンは剣よりも強し。ペンを握った男の「逆転」ヒップホッパー的反逆人生。そして「ここ」は、そんな西園寺貴文の生き方を後続の者たちへと伝承する、極めてアンダーグラウンドな世界である。 U-18、厳禁。低脳、厳禁。情弱、厳禁。



