人類が最初に起こしたイノベーションは1825年。
世界最初の鉄道が走った時です。
産業革命の象徴は蒸気機関の開発による動力源の刷新。
これによって、
- 工場制機械工業
- 交通機関への応用、交通革命
が起こり、人類の生産性は飛躍的に上がった。
世界が変わった。あらゆる変化が起こった。
事業、産業、仕事、生活水準、全てが変化する。
ローマ帝国の時代の2000年前から、この産業革命が起こるまでの長い間、人類の生産性はせいぜい2倍くらいにしか進化していなかったそうです。しかし、産業革命を機にたったの200年程度で人類の生産性は50倍〜100倍程度に跳ね上がっています。
GDPも劇的に増加。
そしてそれに伴って、世界の人口も急増。
https://tokyo.unfpa.org/ja/resources/資料・統計
人類は有史以来、いや、有史以前から戦争ばかりしていますが、産業革命以降の戦争は技術の進展と共に酷いものになりました。
二度の世界大戦は凄まじい戦死者を出しましたが、それでも、戦争の影響を超越するほど命を育む力があるのがイノベーションなのかもしれません。
イノベーションとは、人類を豊かにするものである、というのは間違いなさそうです。
イノベーションとは何かがわかる具体的なわかりやすい事例
出典:“Fifth Avenue in New York City on Easter Sunday in 1900”, National Archives and Records Administration, Records of the Bureau of Public Roads (30-N-18827) [VENDOR # 11], https://www.archives.gov/exhibits/picturing_the_century/newcent/newcent_img1.html
こちらは1900年のニューヨークです。
そして、それから13年後・・・
File:Ave 5 NY 2 fl.bus.jpg From Wikimedia Commons, the free media repository https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Ave_5_NY_2_fl.bus.jpg
1913年のニューヨーク。
たった13年で街の景色がガラリと変化したことがわかります。
T型フォードがどれだけイノベーティブな製品・商品であったのか、
そしてフォードがそれだけ世の中に影響を与えたイノベーターであったのかがわかります。
フォード社のライン工生産システム(フォーディズム)は経営学の教科書で出てくる鉄板の事例ですが、フォードは生産システムや雇用の意味でも画期的でした。多くの雇用、安定した給与が、経済水準を高め、
「会社に入ってお給料をもらい、家と車をローンで買う」
というような現代的なサラリーマンライフスタイルを生み出す原点となった。
そして直近の事例だとこちら。
スティーブ・ジョブズ率いるApple社が成し遂げたことですね。この写真は、「ジョブズがどれだけ世界を変革したかがよくわかる一枚」としてネットでバズりました。
人々の生活行動を変える力がイノベーションにはある。
直近の事例だと、メルカリ、Youtube、インスタグラム、tiktiok、ウーバーイーツ、LUUPあたりもイノベーションを起こしていると言えるかもしれません。イノベーションが起こると不可逆的な波となり、一時のブームで終わらず社会に定着するため、対応しないと逆に淘汰される側になってしまうという意味で破壊的な力があります。
https://youtu.be/7lpJsmy5ThI
技術より市場のハードルの方が高い
アメリカでの大企業のプロジェクトに関する調査によれば、技術的な成功率80%に対して、市場での成功率はその中の20%だったそう。
つまり、100件のアイデアがあったとしたら発明となるのは80件。
さらにその中の2割である16件しか市場に受け入れられて浸透しないということ。
発明(インベンション)だけでは足りず、これを市場に浸透させることがイノベーションの要件・条件だということです。
- 普及
- 浸透
- 開拓
がキーワードとなるでしょう。
イノベーションを日本語に言い換えると、「創新普及」と呼べそうです(玉田俊平 関西学院大学)。
また、イノベーションは革命では無く発展が本質、とは名和高司氏。革命はひっくり返すことであり、イノベーションはエボリューション、すなわち進化に近い概念。この意味でゼロからの創造ではない。
イノベーションが必要な理由、社会的な意義
馬車の時代から、車の時代(モータリゼーション)にシフトしたのは画期的なイノベーションだったと思いますが、これによって生産性は上がりましたし、新しい関連産業も生まれました。
この意味で、イノベーションは、新しい需要と共に、新しい企業・産業を産んだり、雇用を増やしたり、生産性を高めることにも関係していると言えるでしょう。
イノベーションは効果はもちろん、効率にもインパクトを与えます。
効率に影響を与える場合は、既存の何かを陳腐化させる破壊的イノベーションであることが多いです。
石油は何十年も前から「枯渇する!」とか言われていましたが、シェールガス革命やら、エネルギー効率の良いハイブリット車・EV車などが現れて、事情が変わってきました。
地球の資源は有限です。
既存のエネルギーをもっと効率的に使う方法が無いと私たちは困ります。
人類は、地球の資源を食い散らかす存在です。
その意味において、いつか自分達で自分達の首を絞める形で滅亡してもおかしくないのですが、要所要所でイノベーションを起こして乗り切ってきています。
地球全体としてもそうなのですから、国家という単位になると尚更イノベーションが生き残りの鍵となりそうです。
収穫逓減の法則にも争うのがイノベーション。常識や定説を覆していく。
文部科学省も、「成長(生産)=一人ひとりの生産性×労働力人口」と定義し、付加価値の高い人材を育成するためにはイノベーションの創出やグローバル化を担う人材が必要である、と考えているようです。
(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/wg/koyou/dai4/siryou2.pdf)
企業はなぜイノベーションを起こすことが重要なのか、必要な理由とは
イノベーションが重要なのは、それによって企業が競争優位を勝ち取り、それが社会に行き届いて人々に恩恵を与えるからです。
Googleの元CEOであったエリックシュミットは、
「自社のサービスラインナップ(事業)を振り返った時、技術的革新性が無かったサービス(事業)は生き残っていない」
という話をしていました。
スティーブ・ジョブズは、イノベーションのお手本・先輩としてSONYのウォークマンを激賞していましたが、あの製品は市場調査をして迎合しリリースされたというよりは、全くゼロからSONYが市場を切り拓いたイノベーションの事例として有名です。イノベーションは顧客に驚きをもたらすものであり、
「どんな馬車が欲しいか?」→「もっと速い馬車」
という質問から自動車は生まれないことを引き合いに、イノベーションはマーケティングのアンチテーゼのような扱いをされることもしばしば。
秋元康とスティーブジョブズは、同じような理由で「市場調査・マーケティング」を嫌ったり、不要だと考えているようです。秋元康はマーケティングは所詮過去だと言いましたし、ジョブズは「顧客は実際に商品・製品を形にして目の前に提示されなければ何が欲しいかわからない」と言いました。
大抵の企業は、創業期においてイノベーターである創業者が引っ張りますが、大きくなるとルーチンワークだけで儲かるようになり、創業世代の支持を忠実に実行するタイプが幅を利かせるようになります。
世代交代が進むと管理職型人材が溢れ、官僚的組織になり、気がつけば企業の中はリスクの取り方がわからない、新しいことの進め方がわからない人材だらけになる。
そうこうしているうちに時代は移り変わり、過去の成功体験が通用しなくなり、成績が落ち込んでピンチになり、新しい変革をリードする必要性を認識しつつも手が打てずにジリジリと後退していく・・・・・・。
イノベーションの定義
首相官邸の教育再生ワーキンググループで配布された資料によると、
イノベーション(未来・商品)=技術×デザイン
だそうです。
イノベーションと聞くと創造的な感じがしますし、デザインはジョブズも重要視していた概念で、
デザインとはどう機能するかだ
と語っていましたから、ここが単なる「クリエイティブ」との違いなのかもしれません。社会に新しいファンクション(機能)を与える、インプットとアウトプットの効率やあり方を変えるのがイノベーションなのかもしれない。クリエイティブはただ単に一時の流行で終わりがちです。
イノベーション研究に関する国際標準指針である「オスロ・マニュアル2018」によれば、企業のイノベーションは
- プロダクトイノベーション (商品・サービスが異なる)
- ビジネスモデルイノベーション (ビジネス機能に関する新しい機能)
に分類することができるそうです。
イノベーションの起こる「場所」で分類すると、後者は企業内部(HOW)、前者は消費者に対するアウトプット(WHAT)であると言えそうです。
これに加えて、消費者の認識に働きかけるメンタルモデルイノベーション(WHO)も加えるという考え方もあります。
https://bizzine.jp/article/detail/946
日本人が得意だとされるのが「ビジネスモデルイノベーション」であり、これはトヨタのトヨタ生産方式などが有名でしょう。
イノベーションを始めて定義したのは、ヨゼフ・シュンペーターだと言われています。
イノベーションは、1911年に、オーストリア出身の経済学者であるヨーゼフ・シュンペーター[3]によって、初めて定義された。シュンペーターはイノベーションを、「経済活動の中で生産手段や資源、労働力などをそれまでとは異なる仕方で新結合すること」と定義
新結合こそイノベーション。
シュンペーターは、イノベーション(新結合)を5つに分類しました。
-
新しい財貨すなわち消費者の間でまだ知られていない財貨、あるいは新しい品質の財貨の生産 – プロダクション・イノベーション
-
新しい生産方法の導入 – プロセス・イノベーション
-
新しい販路の開拓 – マーケット・イノベーション
-
原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得 – サプライチェーン・イノベーション
-
新しい組織の実現 – オルガニゼーション・イノベーション
バリューチェーンを改革することと同義ですが、この点では国内系ならリクルート、三菱商事、ファーストリテイリングあたりがイノベーション上手な企業かもしれません。海外勢ならテスラ、アップル、Amazon、Google。
イノベーションを主導する人間が起業家(アントレプレナー)である、という考えもシュンペーターによるものです。
ピータードラッカーは、企業が収益を生み出すためには、
- イノベーション
- マーケティング
の2つしか無いと言いました。
ドラッカーは、マーケティングは「顧客の創造」で、イノベーションは「より優れ、より経済的な財やサービスを創造すること」と定義しました。
彼のイノベーションの定義はちょっとふわっとしていますが、彼はイノベーション7つの機会というものを提唱し、
- 予想外のもの (成功、失敗、外部)
- ギャップ (業績、認識、価値観、プロセス)
- ニーズ/需要 (プロセス、労働力、知識)
- 産業構造の変化 (市場の急激な成長、市場の捉え方、対応の仕方、技術の合体、仕事の仕方)
- 人口動態
- 認識・世論の変化
- 新発明・新知識
の7つがイノベーションの切り口だという考えを持っていました(この順にリスクが低い、とリスクマネジメントにも役立つ概念)。イノベーションが起こる条件、起こせる条件と言い換えることもできそうです。ここから見てもわかるように、「変化とギャップ」がキーワードであることがわかります。また、ドラッカーの考えによると、必ずしもイノベーションは技術革新ではないことがわかります。
私は、この教えに沿って、イノベーションとマーケティングは対になっているものと考えています。企業経営の両輪ですね。
あえて言い換えるなら・・・・・
マーケティングはオプティマイゼーションで、イノベーションはイシュー&ソリューション。
私はこう考えています。
実務的にはこのように定義するのが都合が良いからです。
社会的問題・課題を解決する
イノベーションに必要なものは何でしょうか。
- 顧客
- 課題(イシュー)
- ソリューション
の3つでしょう。
まずイノベーションを欲してくれる具体的な人がいなければ成り立ちません。そしてその人たちは問題・課題を抱えている。ここに対してソリューションがある。これが受け入れられて広まっていくとイノベーションが起こります。
必ずしもイノベーションが技術革新とは限らない理由は、世の中には受け入れられない技術・広まらない技術も存在するからです。シンプルに役に立たない、要らないというケースもあるでしょうし、コスト的な問題もあるでしょう。
イノベーションの創造的な側面として、需要や課題を開拓していく、ひいては顧客・市場を開拓していく、というような市場創造的な効果があります。イノベーションにおける創造とは市場の創造です。他のプレーヤーも巻き込むことができれば、商品・製品次元、会社・企業次元ではなく、産業次元で大きなインパクトになり、社会を大きく動かす・変革することになります。
イノベーション人材の必要性が叫ばれる日本
人口が日本の2/3しかないドイツに、日本はGDPで抜かれてしまいました。
生産性が低いということです。
本田宗一郎(HONDA)や、盛田昭夫・井深大(SONY)、安藤百福(日清)の時代は日本人はイノベーティブだった。
しかし最近はどうしてもサラリーマン人材が増えている。
大企業も行き詰まりを感じている。
こういう話はよく聞かれます。日本の抱える大きな問題・課題。
まず基本的な問題として、日本はICT(information&Communication technology)セクター以外の生産性も低く、DXを進めるという基本的なやるべきことができていないという問題があります。だから、あちこちでDXDX叫ばれているのです。特に官公庁(公務員)のDXの遅れはよく指摘される通りです。
すでに起こったイノベーション(すでに起こった未来)を、キャッチアップできるか、アプライできているのか、という課題は重要でしょう。
日本人はどうしてイノベーションを起こすのが下手・不得意なのか?
日本は技術や製品の質にこだわりすぎだとよく言われます。
日本人のイノベーションの失敗事例として格好のケーススタディがあります。
電子書籍市場で、AmazonのKindleよりも先に品質の高い製品を投入したのはソニーでした。目に優しい画面、バッテリーの寿命、容量の大きさなど、製品の核性能についてはユーザーの評価も高かった。しかしなぜ負けたか。
それは、ソニーが電子書籍市場をうまく育てることができなかったからです。市場創造に失敗したからエス。Amazonは出版社をうまく巻き込み、出版社や著者の利益が電子書籍市場によって増えるように目配せをして交渉したことが知られています。
思えば、Googleも同じようなイノベーティブなリーダーシップによってyoutuberという新しい仕事を生み出し、イノベーションを起こしました。
ソニーやシャープ、パナソニックの凋落から何を学べるでしょうか・・・。
リスクマネジメントはリスクを取らないことではない
「リスクを取るのか、取らないのか」というゼロヒャクのマネジメントがリスクマネジメントではありません。
45歳でリクルートの社長になった出木場さんが、「部下に失敗をしてもらっても良いような環境を作るのがマネジメント」ととても良いことを言っていましたが、これがリクルートがイノベーティブでいられる理由なのかもしれません。
リクルートのように常に新規事業の種を探して、段階論でマネジメントしていけば良いのです。予算や期間に条件を設けて、うまく成長しないものは間引いていくような多産多死のマネジメントをすれば良い。
Googleの20%ルール
赤ちゃんを育てるのと同じで、新規事業を開拓していくためには予算も労力も意図的に割り振っていかなければなりません。Googleは、働いている時間の20%を現在の業務とは関係のない活動にあてることをルール化して、意図的にイノベーション体質な組織になろうとしていた時期があります。
一企業に限らず、アメリカがイノベーションに強いのは、国全体で、イノベーティブなものに予算と人員を充てるようなシステムづくり、イデオロギー・アジェンダがある点でしょう。何より彼らはそれで成功してきた成功体験を持っている。
第二次世界大戦中に開発に成功した原子爆弾はものすごいインパクトがありました。あの大戦中に予算と人員を充てて核兵器開発をやり抜いたのです。ドイツも日本も似たようなことはやっていましたが、途中で頓挫してしまいました。
アメリカは国の危機を、イノベーションで乗り切ってきています。
- VT信管
- 核開発
もそうだし、戦後、日本がグイグイ伸びて押しやられている時に、IT産業・金融産業で起こしたイノベーションによって再度息を吹き返したのがアメリカの強さでした。
技術革新が必ずしもイノベーションとは限りませんが、R&Dに充てたリソースが企業の将来収益に貢献することは統計的に確かめられた事実ですし、技術開発がイノベーションにおいて大きな役割を果たすことは間違いありません。
当然ですが、そのベースとなる基礎研究、学術機関・研究機関をどれだけ整備できるか、そして優秀な人員をどれだけ惹きつけることができるかは要となるポイントです。アメリカは今も世界中から優秀な人間を集めていますが、大戦中・大戦後も敵国の優秀な人員をかき集めては持って帰るようなことをしていました。非常に抜かりが無いと言えるでしょう。
イノベーションの破壊的な側面
アメリカの経営学者、クレイトン・クリステンセンが提唱した「イノベーションのジレンマ」という概念があります。
優良企業は顧客のニーズに応えて従来製品の改良を進めるが、やがて、ある段階で顧客のニーズを超えるような無駄なファンクション・特長を付加するようになってしまう。そして、新興企業が打ち出してきた新しい軸に顧客を奪われて、一気に凋落してしまう、というものです。
クリステンセンは優良大企業が破壊的イノベーションにやられてしまう理由として以下を挙げました。
企業は顧客と投資家に資源を依存している。既存顧客や短期的利益を求める株主の意向が優先される。
小規模な市場では大企業の成長ニーズを解決できない。イノベーションの初期では、市場規模が小さく、大企業にとっては参入の価値がないように見える。
存在しない市場は分析できない。イノベーションの初期では、不確実性も高く、現存する市場と比較すると、参入の価値がないように見える。
組織の能力は無能力の決定的要因になる。既存事業を営むための能力が高まることで、異なる事業が行えなくなる。
技術の供給は市場の需要と等しいとは限らない。既存技術を高めることと、それに需要があることは関係がない。
https://ja.wikipedia.org/wiki/イノベーションのジレンマ
イノベーションは、新しい効果をもたらしたり、既存のものを代替する圧倒的な効率を実現したり、場合によってはオセロのように市場をひっくり返してしまうことがあります。
亀山モデルの失敗
シャープはステータスを液晶に全振りして失敗した企業です。
往々にして企業は、既存顧客・市場に対して、グレードアップ、アップデート、改善によって対応していこうとするインクリメンタルな「漸進的イノベーション」に偏りがちです。良くても飛躍的な進歩があるラディカルな「画期的イノベーション」。
この二つは持続的イノベーションと呼ばれます。
シャープが亀山工場に大規模な投資を行い立ち上げた「世界の亀山モデル」というブランド。当初は良かったものの、後にそれがシャープの業績を引っ張る荷物となり、台湾の企業に買収されるまで転落してしまいました。
テレビは所詮、
- 暇つぶし
- 情報収集
- 感動するため
というジョブのためにハイアリングされたプロダクトに過ぎない。
シャープに限らず、テレビを生産する企業は、ひたすら画質を上げていくことにこだわり、4Kだの8Kだの追求していってしまいます。画質が良くなるのは良いことですが、それに伴い価格も上昇していけば、いつの段階からか顧客のニーズを超えた「やり過ぎ」な状態がやってきます。
過剰供給・過剰満足の状態。
こうした時に、「辺境」から破壊的イノベーションが起こるのです。
デジタルカメラは当初、主要顧客に見向きもされなかった
デジタルカメラは当初、フィルムカメラの主要顧客であるプロカメラマンやハイアマチュアには見向きもされませんでした。しかしその性能や利便性により、従来とは違う客層を開拓・獲得していった。ここからデジタルカメラによるカメラ市場の破壊的イノベーションが起こっていったのです。
世界史を見ても、イノベーションは辺境から起こってきた
世界の歴史を見ても、長らく中心だったのはユーラシア大陸を占拠する国家・権力者です。チンギスハーンなどは良い例でしょう。中国が長い歴史を持っていて、大昔はまさに世界の中心であったこと、世界三大発明である火薬・羅針盤・活版印刷のいずれも中国起源のものであることからもわかるでしょう。
しかし、イノベーションは辺境から起こりました。
メインストリームにおいて、わちゃわちゃとやっている間に辺境では新しいものが生まれる。ヨーロッパはまさにユーラシア大陸を広く占拠する勢力に対する辺境の位置付けでした。
ビジネスにおけるイノベーションも、主要顧客から見向きもされていなかったビジネス、商品・製品が、辺境からどんどん市場を占拠していきます。やがて既存のメインストリームにいる大企業やその主要顧客も変えてしまう。これが破壊的イノベーションです。
イノベーティブ企業ランキング
BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)が発表した資料によると、日本で最もイノベーティブな企業はソニー、これにトヨタ、日立が次ぐとのこと。
世界のイノベーティブな企業TOP10は、アップル、マイクロソフト、アマゾン、アルファベット(google)、テスラ、サムスン、モデルナ、ファーウェイ、ソニー、IBM。
34位にランクインするProcter & Gamble社の元CEOであるAG・ラフリーは著書の中で、
ピータードラッカーは人口構造の変化が実りあるイノベーションの機会になると言っている。いつもながら彼は正しかった
と言っています。また、イノベーションにおいては成功率100%は安全策を取りすぎであり、成功率を50〜60%に留めようとしているそうです。
起業家の誕生は明らかに分布が偏っている
コンドラチェフの波、と呼ばれる50年周期でやってくる波があります。
https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h28/hakusho/h29/html/n1113c01.html
歴史を振り返った時、著名な「起業家」が大量に現れるフェーズがある、集中分布している時期があるということに気付けます。例えばキーエンスの創業者・滝崎氏と日本電産の創業者・永守氏は創業年が近く、同じ時代を生きて製造業系で起業した人物です。HIS創業者とパソナ創業者も生年月日が近く、同じような時代を生きてサービス業で成功しています。
孫正義・スティーブ・ジョブズ・ビルゲイツも生年月日が近く、同じような時代に同じようなチャンスに乗って成功した人物です。IT革命が起こってから、多くの若者がチャンスを掴んで成り上がっています(孫正義の生涯のテーマは「情報革命で人々を幸せに!」です)。
そして、その根底にはイノベーションがあるのです。
理系的イノベーションが新技術や技術の適用に偏ったものであるとするならば、文系的なイノベーションは認識に関わるものでしょう。フィリップ・コトラーに認められた鬼才である元ネスレ日本法人代表の高岡浩三氏は、
新しい現実が何かを常に考えている。ここ2〜30年で劇的に増えたのは世帯数。東京23区に限れば80%が単身世帯
と語っています。彼のイノベーションの着眼点はドラッカーの提示した着眼点そのものであり、
- 予想外のもの (成功、失敗、外部)
- ギャップ (業績、認識、価値観、プロセス)
- ニーズ/需要 (プロセス、労働力、知識)
- 産業構造の変化 (市場の急激な成長、市場の捉え方、対応の仕方、技術の合体、仕事の仕方)
- 人口動態
- 認識・世論の変化
- 新発明・新知識
コトラーはドラッカーの影響を受け継いでいるため、これらは文系的なイノベーションの作法と言ってもいいかもしれません。
(ちなみにドラッカーはケインズではなくシュンペーターから強い影響を受けていた模様。)
スティーブ・ジョブズも、エレクトロニクスやコンピュータサイエンスに明るかったとはいえ、プログラムが組めたわけではありませんし、技術者だったわけではありません。しかし彼は、現実の認識に優れていた。イノベーションを起こすために、市場や技術、社会情勢を利用することに長けていた。
課題の質を追求せよ!
『起業の科学』と『イシューからはじめよ』という本は似たような内容を始めています。ソリューションの質を上げるのでは無くて、イシューの質を上げよ、という話。イシューの質から上げようとしないのは茨の道。これは、『問いから始めよ』『問題発見が大事』というような手垢のついた話と似ています。ただ、それほどにまで重要なのです。起業、イノベーションを担い手はイシューを意識すべきです。
特に起業となると、『バカげたアイデア』である方が有利です。模倣されたり追随されることなく競争優位を実現できるからです。
例えば持ちが良いモバイルバッテリーの開発は、スモールビジネスやスタートアップ起業にとってイノベーションの切り口となることは難しいでしょう。誰が見ても優れたアイデアであり、混戦することが予測されるからです。結局、そうこうしているうちにバッテリースタンドなどを展開するビジネスがイノベーションを起こしてしまったりする。チャージスポットはイノベーションだったと評価することができます。
マルクスとシュンペーターの違い、アダムスミスやケインズとの関係
マルクスは資本主義を、労働者からの搾取(余剰価値)が資本主義の本質だと論じましたが、シュンペーターはイノベーションこそ資本主義の本質であり、これは人間の知力によって駆動されると考えました。
アダムスミス的な自由市場主義がうまくいかなくなった時代に彗星のように現れた時代の寵児、ケインズのマクロ経済学は現代の国家政府における金融・財政政策にもその思想が脈々と受け継がれています。しかし、マクロ的に無理矢理経済を動かそうとする考えと、シュンペーター的な経済学はある意味で水と油でしょう。
実際、シュンペーターはケインズ理論を反資本主義的だと断じている。
シュンペーターはイノベーション、すなわち資源を陳腐化した古いものから新しい生産性の高いものへ移す企業家精神こそ経済の本質、特に現代経済の本質と考えました。
イノベーションは創造的破壊であり、昨日の資本設備と資本投資を陳腐化させる。
ただし破壊が本質ではありません。資産の組み替え、休眠資産の活用。ジェイエイブラハム言うところのhidden assetsの活用ですね。既存の資産の既存の仕組みから差し引く引き算が破壊にあたり、新しく組み替えるのが創造。そしてそれが足し算ではなくかけ算であることが重要。これはLuxem dnaでも触れました。
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"make you feel, make you think."
SGT&BD
(Saionji General Trading & Business Development)
説明しよう!西園寺貴文とは、常識と大衆に反逆する「社会不適合者」である!平日の昼間っからスタバでゴロゴロするかと思えば、そのまま軽いノリでソー◯をお風呂代わりに利用。挙句の果てには気分で空港に向かい、当日券でそのままどこかへ飛んでしまうという自由を履き違えたピーターパンである!「働かざること山の如し」。彼がただのニートと違う点はたった1つだけ!そう。それは「圧倒的な書く力」である。ペンは剣よりも強し。ペンを握った男の「逆転」ヒップホッパー的反逆人生。そして「ここ」は、そんな西園寺貴文の生き方を後続の者たちへと伝承する、極めてアンダーグラウンドな世界である。 U-18、厳禁。低脳、厳禁。情弱、厳禁。